約 70,239 件
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/108.html
練度向上の為近海の敵艦を狩り尽くしたため数日、休息を取れるようになった。 本日は晴天、絶好の海水日和である。普段は艤装に身を包んだ艦娘たちも水着に着替え思う存分遊ぶつもりらしい。 普段は艦娘が屯し騒がしい指令室も今はペンの走る音しかない。しかし全く艦娘がいない訳ではない。 「ゴーヤ、お前は遊びに行かないのか?」「海の中なら毎日泳いでるでち、飽きたのぉ」 とソファーに寝転がり足をプラプラさせている伊58通称ゴーヤが答える 我が艦隊唯一の潜水艦として働き尽くしの彼女にとっては休日まで海には入りたくないらしい。その割にはいつもの水着にセーラー服というスタイルだが 「いつも酷使してすまないとは思っているさ」「あ、大丈夫でち!そういうのが私の仕事だって分ってるし、てーとくのお役に立てれて嬉しいでち!」 そういうとにっこりと笑みを返してくる。 「そうか?いつも頑張ってくれてるし何かして欲しい事とか欲しいものはあるか?」「欲しいもの…あ」 ポンと手を叩く。何か閃いたらしい 「で、湯加減はどうだ?」「最高でち!ドックのお風呂も好きだけどこうして、てーとくと入るお風呂は格別でち!」 彼女の欲しいモノ。それは指令室の隣にある檜の温泉に提督と一緒に入ること。流石に真っ裸という訳にもいかず二人とも水着である。 「良いお湯でち~」「ああ、そうだな」 提督の頬は赤い。それはお湯によって暖まっただけではなく膝の上にゴーヤを乗せる形で風呂に入っているからである。 ゴーヤが体を揺らすたび彼女のスク水を着た尻が水着越しに陰部を刺激してくる。 「てーとく、なんかお尻に固いものが当たってるでち」「いや、これはだな」 流石に気が付いたゴーヤが不思議そうに顔を見上げる。そして体制を向かい合うような格好に変え右手で硬くなった提督のモノをギュッと掴む 「むお!?」「てーとく?これは何でち?」 純粋な好奇心に光る眼、そして小さな手は容赦なく刺激を与えてくる。そしてそのままズルっと水着を脱がされる 「うぁ…てーとくも魚雷さんもってたんでちね!」「いや、これは魚雷じゃないんだが」 なでなでと提督の魚雷を撫で始める。 「あ、大きくなったでち、てーとくの魚雷さんは暴れん坊さんでち」「ゴーヤ、やめろ」 会館に流されかけた理性を奮い立たせゴーヤを静止させようとするが、どぷっと堪えきれなかった精子が湯船に放たれる。白いそれは熱によってさらにベタつきゴーヤの手に引っ付く。 「なんか出て来たでち!?」 やってしまったと真っ白になる提督をよそに手についた精子をパクッと口に含む。 「不味いでち…」「ゴーヤ…」 ゆらりと提督の腕がゴーヤを掴む。 「て、てーとく?ちょっと怖いでち…その悪戯は謝るでち。だから」 なけなしの理性も切れた提督はゴーヤのスク水の股間部の布をずらす 「やめて!」 抗議の声は届かず提督の腕を外そうとするも腕力でかなわず。そのまま提督の右手の太い指がゴーヤのぷっくりとした土手の肉をつまみふにふにと揉みだす 「いや、ん、てーとくぅ…」 初めて他人に触られる快感にぶるっと体を震わせるゴーヤ。そして提督の指はお湯とは違う滑りを感じゆっくりと肉の裂け目に入っていく。そして左手で水着越しに胸を愛撫する。 「ひゃ!てーとくの指ぃ…ゴーヤの中に入ってぇ…あん…」 抵抗する力も抜けされるがままになるゴーヤに提督が声をかける 「どうだ?」「ふぇ…指とぉお湯が入ってきて、キモチイイ」 そうかと答えると提督はゴーヤの唇を奪う。それに反発もせずすんなりと提督の舌を受け入れ気持ち良くなるためゴーヤも舌を動かす。口からこぼれた唾液がぴちゃっとお湯に溶ける。 「ゴーヤ、お前の中にコイツを入れたい」 先ほどよりもまた大きくなった提督のモノ。それをうっとりと見つめこくりとうなずくゴーヤ。 (さっきの指だけであんなに気持ちよかったでち…あんな太い魚雷さんなら…) そして向かい合ったままゴーヤは腰を浮かしゆっくりと飲み込んでゆく。ぷちっとゴーヤの中の何かが切れ赤い血が湯に広がる 「痛ッ…」「ゆっくり息をして力を抜きなさい」「ふぁ…はい」 すぅと息をするたびにゆっくりとゴーヤの中に飲み込まれていく。 「痛いの…飛んでった、でち」「ん、ゴーヤはおりこうさんだからな」 胸を弄る左手をとめ頭を撫でてやるとゴーヤは気持ちよさそうに目を細める 「動くぞ…もっと気持ち良くなれるからな」「ハイでち!」 ばちゃばちゃと湯が音を立て二人の腰が動き出す。 「あぁ!てーとく、キモチイイでちぃ!」 水の弾かれる音とゴーヤの甲高い声がだんだんと大きくなっていく。風呂場の反響も気にせず激しくなる動きについにゴーヤは達する 「てーとくぅ!来ちゃう何か来ちゃう」「我慢するなよ」「あ、あぁあああああ!」 「で、一緒に入って我慢比べしてゴーヤがのぼせた…と?」「はい、面目次第もございません」 あの後逆上せたゴーヤの水着を正しソファーで寝かせているところを霧島さんに見つかり提督は説教中。 「まったく、何時もはまともなのにどうしてこんな事を…」「いや…うん…若気の至りと言いますか」「まさか、ゴーヤに如何わしいことを…」「いえ、滅相もございません」 流石に本当のことを言えるはずもなくじっと説教を受けている 「私だって一緒に入りたいのに…」「?霧島さん何か…」「何でもありません、次からは気を付けてくださいね!彼女の代わりはいないんですから」「ハイ、すいませんでしたぁ!」
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/50070.html
暴走提督(ぼうそうていとく) オーバーメーター 暴走提督 オーバーメーター R 火 (9) クリーチャー:ソニック・コマンド 4000 ■相手のカードの効果によって、このクリーチャーが自分の手札から捨てられる時、墓地に置くかわりにバトルゾーンに出してもよい。 ■このクリーチャーが出た時、自分の山札の上から3枚を表向きにする。その中からソニック・コマンドを全て自分の手札に加え、残りを好きな順序で自分の山札の一番下に置く。その後、相手のコスト2以下のエレメントを1つ選んで破壊する。 作者:ぺこ フレーバーテキスト 過剰なくらいが、ちょうどいい ーーー暴走提督 オーバーメーター 評価 選択肢 投票 ぶっ壊れ (0) 良カード (0) 普通 (0) 微妙 (0) 弱い (0) わからない (0) コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/334.html
前回の話 一体どれほどの戦争の傷跡を海の底に刻めば、民間人が呑気にヨットを出して日光浴に励む風景が蘇るのか。 この根本的な議題は、頭の柔らかい提督を百人選抜して集合しようが結論は出ないだろう。 深海棲艦を沈めても同じ場所にまた現れる謎のメカニズムは、どのような手段を経て止めることができるか。 その真相は、直々に彼らに自白剤でも飲んでもらわない限りは藪の中……ではなく、珊瑚礁の中だろう。 まず彼らの殆どが人の言葉を発するのかすら怪しい。 先に述べたこれらの事は、全て確かめようのないことなので、自分一人の勝手な予想にすぎない。 未来を見据える事は大切である。 が、現在を見据える事は輪をかけて大切だ。 そこで自分は一旦、その遠い未来について考えるのをやめ、今を見つめ直そうと考えた。 その結果が、この夢なのかもしれない。 …… ………… …………………… 『北上さん? あ、提督、なんですか?』 なあ。 『はい』 お前とは、もうかなりの付き合いだよな。 『……そうですね』 お前の隣にいるのは北上だということはよく分かっている。 『…………』 空いているもう片方の隣に、私を置かせてほしいんだ。 『……提督』 うん? 『提督は、女心が分からないようで困ります』 え? 『提督は、北上さんと私の間にいなきゃダメです』 ……いいのか? 『北上さんも、そう望んでいます』 ……私は、北上にはお前と同じように接することはできないぞ。 『それでも、せめて、傍にいてあげて?』 ……分かった。 それで、だ。 『はい』 私とケッコンしてほしいんだ。 『……ごめんなさい』 …………。 『この戦争が終わるまで、待ってほしいの』 …………!! 『あっ……! やだ、提督、離し――』 いやだ!! 『提督……?』 いつ終わるか分からない戦争が終わるまでなんて待てない! 『…………』 すぐにでもケッコンしたいんだ! 頼むよ、大井。私と―― …………………… ………… …… 「結婚、してくれ……」 「……!」 どんっ。 「ぐあっ!」 この日は、胸を強い圧迫感で押されてベッドに背中を叩きつけられ、 少しの間呼吸が止まり、息苦しさに耐えられず目覚めるという最悪の朝から始まった。 一生懸命に酸素を取り込もうと動く肋骨の中の暴れ馬を鎮めようと、思わず伸ばしていた手を胸に当てた。 ……はて。自分は何故両手を伸ばしていたんだ? 「……て、提督! 着任時刻を過ぎてます! 早く起きてください!」 ……嗚呼、この声を聞いて思い出した。 その瞬間、つい先程まで見ていた夢を覚えておかなければ、という謎の使命感によって、 自分の意識は急速に覚醒状態まで引き揚げられた。 その甲斐あって断片的ではあるが、夢の中盤と終盤辺りの映像を脳味噌に新たな皺として刻むことに成功した。 それから、浅いレム睡眠の中、何とか言葉を発し、腕を伸ばして何かを捕まえるよう脳が無理をして命令していた記憶もある。 そこに大井がいたという事はもしや……。 夢の中にしてはあの大井の抱き心地はやけにリアルだと思ったが、合点がいった。 寝ながらにして体を動かす体験をしたのは初めてかもしれないな、としんみりするのも束の間、 ベッドサイドテーブルの目覚まし時計を見てみると、確かに普段起きる時間よりも数十分過ぎていた。 起床時刻どころか着任時刻さえ過ぎるとは全く。 「……ああ、おはよう」 「おはようじゃないですよ、もう」 昼まで寝過ごしたような言い方をするな。まだ八時も過ぎていないんだから。 上体を起こして我に返り、一つ気になったことを投げかける。 「……さっき、私は何か言っていたか?」 「プロポーズの言葉を聞きました」 やってしまったのか。 そういうものは実行する時まで取っておきたかったのに。 いい夢かと思ったらそうとも言えない夢を見て、うっかり寝過ごし、あまつさえまだ秘密にしておきたかったことを漏らす。 今日は厄日か。開発任務も碌な報告にならないかもしれない。 朝から早々、気分が大破した。今の自分はとても迷走している。わざわざ重い頭を上げて大井の顔を伺う余裕もない。 それが原因で、無意識に追い出すような言葉が零れた。 自分が驚くほど声量も小さい。 「……起こしてもらってすまんな。少し一人にさせてくれるか」 「……はい。急いでくださいね」 ……良くない事ばかりだ。 それからこの部屋には、分かりやすく落ち込んだ男がベッドに腰掛けて頭を抱えるという、とてもつまらない静止画が数分程映った。 いつまでもうじうじしていないで、寝巻から軍服に着替えて軍帽を被り、 さて洗面所に行くかと寝室から執務室へ出たが、執務室に大井や紙の束の姿はなかった。 畳に置かれた炬燵は電源が入っておらず、寂しさを演出させる。 提督が寝坊していては秘書もやる気をなくすという意思表示か。 大井がそう思っても仕方あるまい。 どこへ行ったのやら。 洗面所にて排泄と歯の掃除を行い、栄養を取るべく真っ先に食堂へ向かった。 この時間の食堂は席の半分ほどが埋まっている。 真面目な物からフランクな物まで、幾つか飛んでくる挨拶に一つ一つ返していきながら、カウンターの間宮に一膳頼んだ。 間宮はやはりにこにこしていた。 そこまでは普通だった。 「あ、提督さん。大井さんはあちらのテーブルにいますよ」 ここ最近発動させる間宮のこのようなお世話には、喜んでいいのか困るところなのか、とても判断に困る。 結局困ってるじゃないか、とのツッコミは、空母がボーキサイト消費を躊躇って艦載機を飛ばさなくなる気遣いよりいらない。 どこへ行ったかと思えば、まさか食堂だったとはな。 少し遠い、食堂の真ん中に近い辺りに大井はいた。よく見れば北上も同席している様子。 頼んだ料理が出来上がるまで奴らの様子でも見ていようかと近づいて行った。 北上はこちらに気づいたが、向かい合う大井は背中を向けていてこちらに気づかない。 「あ、提督」 「……ふふ、北上さん。もう騙されないわよ」 大井は料理に向かって何を言っているんだ? 声をかけようとしたが、北上のしーっという手振りでそれは躊躇われた。 それに従うように、周りの席の艦も黙り、熱心にこの席を見ているのが異様だ。 大井は周りが見えていないのか、箸で料理を突つくだけ。 北上は話を続ける。 「もう引っかからないかあ。あ、そうだ大井っちさ。提督のどういうところに惚れたのか聞かせてよ」 「ええ!?」 おい朝からこの大衆の中何という話題を振るんだ北上よ。 面白そうだから続けろ。聞いてみたい。 それから声を上擦らせて顔を上げた大井よ。何故周りの異変に気づかない……。 その注意力の散漫が戦場では命取りになるんだぞ。 ほら、食事の手まで止まっている。 「ど、どういうところって言われても……私……」 「えー言っちゃいなよ。誰にも言わないからさ、ね」 確かにこの状況ならお前がわざわざ言いふらす必要もないな。 壁に耳あり障子に目ありと言うが、ここには壁や障子さえもない。 「……その、きつく当たっても態度を変えないでくれるところ、とか」 「ほう」 ほう。 「大事にしてくれるところ……かな」 「へえー」 うむ。私は大井だけでなく皆を大事にしているつもりだ。それが伝わっているなら提督として本望である。 大井のこれらのコメントには胸にじーんと来るものがあるな。 しかし、大井の科白はこれだけでは終わらなかった。 「それからね……さっき起こしに行ったら、抱きしめられて寝言で『結婚してくれ』って言われたの」 「えっ?」 これには流石の北上も唖然。 突然求婚について言及されるとは誰も予想できなかっただろう。自分もできなかった。 正直言ってあれはノーカンとしてほしい。 おい。お前ら私を好奇の目で見るな。見るならこいつらを見ろ。 夢というのはテレビを見ているようなもので、その中の自分は自分の意思で動かす事はできないんだよ。 この状況の手前、それを声に出す訳にもいかず、公開処刑は続けられる。 自分はどのタイミングで出ればいいんだ。誰か教えてくれ。 但し矢文等の危ない方法は使ってくれるなよ。特に一部の空母共。 「あと、夜の提督は――」 「おい」 それ以上いけない。 大井は割って入った私の声に大層驚いたようで、体をビクつかせて箸を盆に落とした。 箸が転んでも笑うと言う諺とはまるで無縁に、盆を転がる箸に構わずこちらへ素早く振り向いた。 それと同時か、あるいは一瞬早く、周りの艦は皆一斉に見るのをやめ、知らぬ振りを決め込む。 「って、提督!? いつからいたんですか!」 「……"もう騙されない"から」 「……! い、いるなら言ってください!」 「いやあ、でも――」 北上が、という責任逃れは、北上のニヤけたしーっという手振りによって憚られた。 最後のところはともかく、いい事を聞き出してもらったし、呑んでやるとしよう。 「――私も聞いてみたくて」 「…………!!」 おお、今補給している最中のはずなのに激務時のように顔が真っ赤だ。 面白い矛盾だな。 「う、海のもずくとなりなさいな!!」 落ち着け。お前今艤装つけてないだろ。 もずくじゃなくて藻屑じゃないのか。 宥めたところで、厨房から飛んできた誰のとも分からない彩雲に乗っかった妖精に、料理が出来上がった事を知らされた。 なんとも便利なものだ。 定食の盆を持ち、着座するのは一悶着起こしたあの四人用テーブルの席。 この二人もまた定食だったが、来るのが遅かった自分より既に半分ほど減らしていた。 早速自分も栄養補給を開始し、適当な話を振る。 大井。お前、ストライキを起こしたんじゃなかったんだな。 「……なんですか? 突然」 執務室に紙一枚見当たらなかったから、てっきり放り出したものかと思ったんだよ。 「私もまだ朝を済ませていなかっただけですから」 それなら、私が起きるのを待たないで食べてくればよかったじゃないか。 こう言うと、大井はぴくっと眉を顰める。 「はあー……」 ……北上。何やら言いたげだな、その溜め息。幸せが逃げるぞ。 「逃げたら裁判起こして提督に訴えるよ。あのさ、提督が起きるのを待っていた理由が分かんないの?」 大井が朝食を我慢して自分が起きるのを待った理由。 簡潔にこうまとめると、一つの答えが浮かび上がってくる。 半信半疑ながら、それを口に出してみる。 「私と朝食を摂りたかったから、かな」 「……気づくのが遅いのよ……」 大井は、そう言って箸で摘まんだ少しの米飯を口に運ぶ。 思い出したように不機嫌そうな顔をして文句を吐く声は小さなものだったが、自分にはよく響き、自分を悲しませた。 嗚呼、今日は朝から良くない事ばかりだ。全て自業自得と言えてしまうのがまた悲しい。 先は自分があんな事を言ってしまったから、大井は私と朝食を摂る事を諦めたのだ。 自分はテーブルに両手を付き、頭を下げて詫びを入れる。 やれやれ。自分は大井に謝ってばかりだ。 「さっきは変な事言ってすまなかった。機嫌を直して、昼も付き合ってくれないか」 「……昼だけですか」 「……良ければ夜も」 昼だけでは不満らしい。勿論こちらとしては夜も万々歳だ。 大の男が少女に頭を下げる事の何と情けない事。 非は自分にあるのだから、尚更機嫌を損ねる事のないよう、低い姿勢で許しを得る他ない。 「……ふふ」 少しだけ気分を良くしたようなこの声で、自分は頭を上げてみた。 そこにあるは馴染みの微笑。 「まあ、いいかな」 許してくれたのか。 しかし、以前から散々聞いてきた大井の説法は、今回も連撃の如く続く。 「提督は、そういうところ鈍臭くて困るんですよ。ほら、髭も剃ってないし。……時計も忘れてるじゃないですか」 「あ……、申し訳ない」 上から下までを眺める大井に、律儀に指でピッピッと指摘されて初めて気づく。 顎に手を当ててみれば髭は剃り忘れていて、左手首には錘となるものがなかった。 先程、大井の注意力は散漫だと大言を語ったが、こちらも提督の不養生だったようだ。 ふとそこまで考え、自分は懲りず先程の話を蒸し返す。 「って、鈍臭いのはお前も大概だろう。"夜の提督は"とか、お前は人の多い所で何を喋ろうとしたんだ」 「そ、それは……!」 「あー二人とも。今は、食べよう?」 いよいよ話の方向性が狂った羅針盤に導かれようとしたその時、苦笑いする英雄艦北上によって軌道修正された。 我に返ってみると、自分ら三人のうち北上だけが目の前の朝食の処理を進めていた。 足の引っ張り合いは後で幾らでもできるので、共々冷めかけている飯を先に掻き込むことにする。 「結婚してなくても充分夫婦だよ」 英雄艦という肩書きの進呈は撤回だ。やはりお前はハリケーン北上でいい。 むせ始め、言われなくとも自分で味噌汁を飲む大井は少しだけ成長したな。まだまだ練度は上がるようだ。 …………………… ………… …… 「提督、新しい仲間が艦隊に加わりました」 今日の演習の内訳と艦の名簿を並べて演習編成について熟考していると、大井が扉を開けてすぐそのような知らせを告げる。 毎日とまでは言わずともそれなりに耳にするこの報告だが、 少し嬉しそうにしていた以前と比べると、最近は義務的な部分が強調された調子に聞こえてならない。 大井にどのような心境の変化があったか、こちらが知る術はない。 「分かった。すぐ向かう」 まだ今日は建造の指示を行っていないので、内心では何時建造させた時のものか疑問だったが、 なるほど、秘書と共に工廠を訪れてみると確かに、艦娘用の大型建造ドックの傍に一人、見たことのない者が佇んでいた。 そういえば昨夜遅くに建造の指示を出してから音沙汰なく、自分も忘れて眠りについてしまったのだが、その時のものか。 とても用心深そうな表情で揺らぎなく直立不動する凛としたその姿は、 華奢であっても見る者全てに頼もしそうな印象を与えるだろう。 「あ……!」 印象通りの注意力を持っているらしいその者は、 まだこちらが充分に歩み寄っていないにも関わらず、こちらに気づいてぱたぱたと近寄ってきた。 上が寄越した必要資材と艦船の資料が正しければ、恐らく。 「君が新造艦だな」 「そう……私が大鳳」 この子がかつての海軍最後の正規空母の生まれ変わりという訳だ。 不沈空母という名に反した史実の不運さには目も当てられないものがあるが、打撃力はとても強いとのこと。 その声は、他を圧倒するようなものではなく、とても優しい色をしていた。 意識していないと顔から力が抜けそうだ。 「私が提督である」 「はい。出迎え、ありがとうございます。提督……貴方と機動部隊に勝利を!」 大鳳はそう言って、気を付けで敬礼の姿勢を見せた。 ううむ。この言動の何と勇ましいことか。 それに反して癒されるような声もあり、とても印象に残るだろう。 「良い心構えだ。今日これから何度か演習を行うが、やる気はあるか」 「はい! 充分に」 「良し。ではまず艦載機についてだが、……」 …………………… ………… …… 「まだ増やすつもりなんですか?」 大鳳に使わせる艦載機を指定してから、 大鳳建造の報告書作成や部屋の割当等の仕事のため執務室に戻っていると、大井は突然そう尋ねてくる。 これだけの問いかけから意味を汲み取る事はできず、聞き返すしかない。 「何を?」 「艦です」 艦娘の事か。 一日に何度も出撃を繰り返す事などざらなので、疲労という問題を解消するには艦娘は多くいる方が良いと考える。 そして今のところ、この鎮守府、もとい艦娘寮に空きはあるので……。 「ぼちぼち、な」 「…………」 黙ってしまった大井の顔を振り向いて伺ってみると、それは考え事をしているようで、あまり嬉しそうには見えない。 どの感情に属するのか迷っているような、複雑な表情、といったところか? 魚雷が失速して海底に落ちていくような状況を明るくできないかと考え、 試しに明後日の方向を向いて茶化してみる事にした。 「それにしても、あの子は随分と可愛らしい胸を――」 「提督」 ほんの戯言は、超弩級戦艦も威圧できそうな声によって、喉から出ききる前に殺され、足の動きを拘束された。 敵戦艦も怯えかねない迫力は、ただの人間である自分ならば失禁しても何らおかしくはないと言える。 軍人と言えども結局は人なのだ。 それでも自分は、起床後に膀胱の中身を排出していたのが功を成したかは分からないが、 みっともなく漏らす事なく、錆びた砲塔のようにぎこちないながらもぎぎぎと頭を回す事ができた。 そこにいたのは、艤装があれば本気で自分を討っていたのではないかと思える、雷巡改二フラグシップ級だった。 怒りの表現に笑顔を用いる事があると本でしばしば見るが、一理あると感心している場合ではない。 「裏切ったら海に沈めるって……言ったわよね?」 自分としてはそういうつもりで言ったのではないのだが、これはきちんと口に出して否定しておかないと後で殺される……! 「でも、提督のことはまだ信じていたいからやめておきます」 しかし、否定する前に大井の殺気はどこかへ引っ込んだ。 いつもの微笑を瞬時に取り戻したので、先程見た光景は幻覚だったのではないかとも逃避したくなる。 幻覚でも見たくないが。 自分は学んだ。冗談でもそういう事を話に出してはいけないと。 「……冗談だよ」 自分はそう締めて足を再び踏み出した。大井もついてくる。 "信じていたい"……、か。 割と本気で自分が目移りしないか不安がっているようなので、これからは控えよう。 不安にさせたくて茶化したわけではないのだから。 朝あんな事があったにも関わらず、まだ納得が行かないのか。 「もう、さっきまであんな調子だったのに」 第一印象は重要だからな。 初めて顔を合わせる時にへらへらしていては、その後はきっと侮られ続ける。 単に舐められていい気なんかしないというのも勿論だが、 いざ作戦遂行の際に指揮を聞いてもらえないような事があっては、 その艦だけでなく艦隊全体に危険が及ばないとも言えない。 それでもあの調子を保つのは息が詰まるので、大井や北上のように本性を曝け出せる存在もまた必要だ。 「……困りますね」 なに? 「それじゃ、私達がいなくなったら、提督は窒息しちゃうじゃないですか」 自分は立ち止まって大井の方に振り返った。 大井は少し俯いていて、こちらに合わせて立ち止まりつつ科白を続ける。 「提督が提督を続けられなくなったら、他の提督が着任するでしょうけど、 提督のように艦を大事にしてくれる保証はないでしょう?」 直接口にする事を避ける代わりに、淡く薄い笑みが縁起でもない事を物語っていた。 自分は見ていることができなくなり、怖いものから守るようその体を包んだ。 「あ……」 「口は災いの元、と言うだろう? 仮定でもそんな事を考えて良い事なんかないぞ」 本当は戦闘なんぞやめさせて匿いたい気持ちもあるが、それでは艦娘としては死を表す。 子供で欲張りな自分は、どうしても生命の存続と誇りの両方を取る事しか頭にない。 全くこいつは、臆病な本質をしている。 頭を撫でて、優しく言葉をかけてやるくらいじゃ安心してくれないかもしれないが。それでも。 「絶対に沈めてやらないから。そんな事言うのは、もうやめにしよう」 「……私が至らなくて、ごめんなさい」 それを言うなら、そういう事を考えさせてしまう自分の甲斐性のなさについて謝罪したいところだが、 それをやると堂々巡りになりそうだった。 一先ずは執務室へ向かう必要がある。まだ昼も回っていない。 少しは元気を取り戻してくれるといいんだが。 大井の肩を抱いて促し、自分らはゆっくりと歩き出す。 この際大井の気分が下がって執務ができなくても、一緒にいてやりたかった。 大鳳の事を放ってきてしまったが、大丈夫だろうか。 切りが良くなったら迎えに行くから、それまでどうか時間を潰して待ってほしい。 本来なら新たに鎮守府に配属した艦は上に報告しなければならないのだが、執務室はとても静かだ。 書類や筆記具は目前に置いただけで、それに手を付けようとも口を開こうともしないからだ。 電源を入れた炬燵に並んで浸かり、密着したこの状態が二十分は続いている。 寝ているんじゃないかと思い頭を横に回すと、偶に目が合うのでその心配はいらないようだ。 目が会うと、自分の事は気にしないで、と言うように表情を柔らかくするだけで、何も口にしない。 じっとこうしている間にも熟考を重ね、頭の中で演習編成を構成できたので、その旗艦に問う。 「……今日の演習、行けそうか?」 「もう大丈夫よ」 「良し、ならばもう少ししたら行くぞ」 「……うふふ。魚雷を撃てるのね」 戦闘狂の片鱗を今から現す大井に自分もにんまりしてから、 炬燵の上のマイクを引き寄せて呼び出し音を流し、内線を入れる。 「三十分後に出港し、演習を行う。以下の艦は、それまでに補給所に集まるよう。 旗艦、大井。随伴艦、北上、木曽、大鳳……」 頭の中の六隻の艦名を読み上げ、最後に内線を切って邪魔なマイクを遠ざける。 「……さて。それまで、こうしていようか……」 「……そうね……」 結局呼び出しておいた自分は、戦闘狂の血も一旦は鎮まった大井とぎりぎりまで肌を温め合う事に徹した。 自分らが最後に集まったのは言うまでもない。 木曽が苦笑している様子は眼帯をつけていても充分に分かるし、 北上がにやけ始めるのもまた見慣れてきたものだった。 …………………… ………… …… 勝利、戦術的勝利が続き、午前の最後の演習を済ませて帰投した時は、もう時針が真上を過ぎていた。 朝の約束通り、昼食も大井と頂く事になった。 北上も誘おうとしたが、北上は大鳳らと共に頂くからと遠慮され、少し離れたところで他の艦と着席していた。 自分も大井も北上を邪魔に思ったりはしないのに。 いや、これは北上以外なら邪魔だという意味ではない。大井はどう思うか分からないが。 醤油や生姜等の調味料で柔らかく焼かれた豚の切身を飲み込んでから、大井に話しかける。 「今日のお前は砲の不発が多かったな」 「む……」 大井は小さく唸って口を止め、しかしすぐに動かし始めた。 大井の御膳の鰻もうまそうだな。少しくれないか。 そう言うと、大井はちゃんと飲み込んでから返事を投擲する。 「交換ならいいですけど、提督の方には釣り合う物がないから嫌です」 お前、金銭の事なんか気にするのか。 その国産鰻が見えなくなるくらい高価な魚雷を脇目も振らず乱射するくせに。 「武器を出し惜しみして怪我はしたくないです」 きっぱりと言い切って鰻を一口含んだ。 勿論こちらとしても被弾しないのが一番なので、 敵を押し退けるのに弾をケチれというような、本末転倒な指揮をするつもりもなく箸を動かす。 正直な所、海域の制圧は命令されれば赴く程度の気持ちしかないので、戦闘に拘りはない。 ……話が逸れた。 えーと、大井の鰻を貰う話だったな。 「違います。鰻はあげませんから」 一切れでいいから、な。 不満なら豚の生姜焼きを半分やるぞ。食いかけだがな。 「要りません。……一口だけよ」 大井は結局手に持って遠ざけていた重箱を盆に置き直した。 鰻を箸で少しだけ切り分けているところを見て、我、妙案思い付くせり。 「……提督、口を開けてどうしたんですか。まさかとは思うけど……」 「あーん、だ」 「周りに他の艦もいるんですよっ」 少し声量を控えめにして早口でそんな事をのたまわれてもな。 大井は恥ずかしいのかもしれないが、私は大井に食べさせてもらいたいんだ、気にしないぞ。 さあ一思いにやるんだ。 「もう……っ」 大井は頭を動かさずに目だけで周りの状況を伺ってから、さっとこちらの口に箸を差し込んだ。 即座に口を閉じたが、伝わるのは温かい鰻の柔らかさとタレの甘辛さだけ。 畜生、箸引っ込めるの速いぞ。 「何考えてるんですかっ。変態ですか」 世間のアベックが普段やっていることだぞ。 これくらいで変態呼ばわりされるなら、自分らは不純異性交遊で揃って仲良くとっくに憲兵沙汰だ。 ついでに言うと、自分はちゃんと責任能力があるので不純にも当てはまらない。 「あの、今食事中なんですが」 おっとすまん。鰻は美味しかったぞ。 えーと、そう。お前の砲撃が不調の話だったな。 「……チッ」 おい。 …………………… ………… …… 流石に執務においては喋り始めると筆が止まるので、黙々と処理していく。 本日中に行った演習や建造完了の報告書の作成をまず済ませてから、 上から課せられた任務をどうにかしてこなそうと頭を使う。 が、流石に疲れてきた。 「……休憩を入れさせてくれ」 「あ、はい。お疲れ様ね」 しかし大井は自分の作業をやめようとしなかった。 戦闘も執務もこなして、お疲れなのはそっちじゃないのかと問いたい。 しかし、今は一人で何も考えず頭を休ませたい気分なので、声はかけないでおく。 席を立ち、壁にかかった上着を羽織る。 「どこか行かれるんですか」 「敷地内を歩くだけだ」 「あまりサボらないで下さいね」 「……ああ」 そして部屋を出た。 部屋を出て、すぐ建物を出たのではない。 間宮に断りを入れてから厨房に寄り道し、冷蔵庫に潜ませておいた刺身のパックをビニールごと持ち出す。 外に出ると潮風が吹いている。少し寒いが、頭の中を空にすればいい。 本棟の横っ面を覗きに行ってみれば、数匹の猫が軒下で丸くなっていた。 自分は手に持っている物を取り出し、何も考えず、何の表情も作らず、 群がる野良猫に切身に加工された鮪を与える。 ここは民家ではないし危険な場所も多い。 こんなところに住み着いていないで、民間人に媚び売って拾ってもらった方が幸せだと思うんだがな。 一枚一枚刺身を猫の口に持っていき、食う様をぼーっと眺めていると、珍しく足音が近づいてきた。 それもよく聞いてみると、二人だろうか。 「提督」 「……大鳳か」 しかし一つの声の発信源へ首を回すと、大鳳だけでなく大井も同伴していた。 「猫がお好きなんですね」 「猫くらいしか動物に興味がないだけだ」 そそくさとごみをビニールにしまい込み、改めて向き直る。 大井もそうだが、艤装を外すと華奢さが強調されて見える。 そのようなどうでもいい感想はさておき。 「どうだ、他の艦とは。上手くやっていけそうか?」 「はい。みんな仲良くしてくれています」 なら良かったの一言に尽きる。 大鳳は優しそうな雰囲気が見て取れるし、心配はいらないか。 大鳳の事は済んで大井に目をやると、片手を差し出された。 その手には何の装飾も素っ気もない手紙が一つ。 「提督に、お知らせみたいです」 なるほど。寒い中ご苦労だった。 艦娘という特性を持ったこの二人は、格好の割にちっとも寒そうには見えないが。 二人とも半袖スカートに加えて、 脇が露出している大鳳はともかく、臍を出す大井ほか多数の艦は、もしも普通の人間だったら風邪を引きかねないだろう。 肉体は耐寒仕様と聞いても病気に罹らないとは聞いていないので、風邪を引かないともまた言えない。 受け取った封を開けて印刷された手紙を見ると、充ては上からだった。 知らせ文が一枚入っているだけで書かれている事も長くないが、要約すれば以下のような内容である。 『艦娘の性能向上を図る為、最大まで練度を高めた艦に限り、 装着することで練度を更に高める事のできる"結婚指輪"の購入を、二月一四日より許可する』 これを最後まで読んで、一分程前まで動かしていなかった顔の筋肉は気持ち悪いくらいに歪んだ。 新入りの艦が目の前にいるのに早速悪印象を与えるのはよくないのだが、顔の筋肉は笑う事をやめさせてくれない。 大鳳は首を傾げ、大井は訝しげな目を向ける。 「……ラブレターじゃないわよね?」 ははあ。そういう考えに至るのか。 分からなくもないが、斜め上の反応だ。可愛い奴め。 上官に向けるべきとは言えないだろう言葉遣いに大鳳が少し慌てても、大井は構わず不審げにこちらを見定める。 大鳳の心配も虚しく、自分は色んな意味で笑いを堪える事ができなくなるだけだった。 艦隊が全くの無傷で戦闘海域から帰還した時よりも気分がいいのは確かだ。 「あっはは! 馬鹿言うな。そんな物貰ったこともない」 笑い飛ばしてから手紙の内容は自分の胸だけにしまいつつ、二人を促して共に本棟に戻る事にした。 …………………… ………… …… 「チッ、なんて指揮……。あっいえ! なんでもありません。うふふっ」 聞こえているんだがな。 しかも今日初めて聞いたわけでもない。 にも関わらず、普通の人間なら十中八九どころか百発百中で怒るかしょげるに違いないこの場面で、 自分の頬の筋肉は持ち上がり、腹の中でこっそり笑うという的外れな反応を下すだけだった。 かくいう自分も以前はこの悪態を耳にすれば少し不愉快になったのに、毒されてきたのかもしれない。 今となっては、偶には聞いておかないと少し心配になる。 朝から晩まで所々に命中率の低下が見られた、不調続きの旗艦の肩を軽く叩いて声をかける。 「次、頑張ろう。な?」 「…………」 すると、長い付き合いでなお取り繕って浮かべる笑顔を流石に崩していった。 先はあのような悪態を偶には、などとのたまったが、 この元気をなくした姿を見ると、本気で作戦指揮を考え直さなければならんのではという気にもさせられる。 真っ暗な空の下で潮風吹く中、人の手で整形された岬に艦娘が並ぶのを確認してから顔を一旦引き締める。 「これにて、本日の演習は締めとする。艦隊解散」 破損した艦に入渠させる指示を出してから、自分は一人執務室へ向かった。 演習の報告書を作成しなければならない。 …………………… ………… …… あまり時間もかからず全ての執務を終え、 艦娘修復ドックとは別に備え付けられている、いくつか並ぶ個室の風呂場の一つにて疲れを流す。 実際のところ艦娘の修復ドックの内訳は大きな風呂場だけではないが、ここでは割愛する。 まず頭を適当に洗い、次に体を―― がらっ。 「!?」 洗おうとすると、背後で突然引戸が開かれる音に驚く羽目になった。 ここの風呂場は恐らく自分しか使わないはずなので霊かとさえ思ったが、 流石に身に覚えのない罪は背負っていなかったようだ。 深海棲艦が霊になって出てくる可能性があるなら心当たりは山ほどあるが、 かの小松兵曹長も絶賛してくれるのではないかと言える素早い首振りで、それは妄想の一つに過ぎなくなった。 「お邪魔しますね」 何故なら、入ってきたのはクリーチャーじみた霊なんかではなく、バスタオル一枚巻いただけの大井だったからだ。 いや、確かに呪われたり後ろから刺されたりする心配はないと言えるが、これはこれで安心できない。 自分は大井みたいにタオルなんか装備していない。 体はこれから洗うところなので、股間がうまい具合に石鹸で隠れているという事も、ない。 回り込まれればたちまち見られてしまう。 「なっ、何しに来たんだ」 「お背中流しに、です」 自分の記憶が正しければ大井には入渠の指示を出したはずだが。 小破だから長時間かからないとはいえ、短時間で二度も風呂に入るという奇行の真意を読めない。 首だけ後ろに向けると、タオルに覆われた二つの山が気になるが、 なるべくそこではなく顔を見て、立ったままの大井に問う。 「入渠はしたのか?」 「シャワーだけ。だから提督と入るんです」 「待て、それなら私にタオルを一枚――」 「必要ありません」 「…………」 出口は大井の後ろ。 タオルは脱衣所。 分かった。投降しよう。 「……好きにしろ」 「! ……はい」 心なしか嬉しそうだな。 すぐに背後で腰を下ろすのが分かった。 背中を流してくれると言うのでそれに任せようと待っていると、 横から手が伸びてきて前に置いてあるボトル石鹸を持って行った。 手拭いでがさがさと石鹸を泡立てる音を聞いて落ち着こうと、俯き目を瞑る。 やがて硬い手拭いが背中に押し当てられた。ゆっくりと上下に全体に石鹸が広がる。 一人では落とし辛い背中の垢がどんどん浮かべられていくも、落ち着いて安らぐ事ができない。 猫背で緊張を隠していたが、少しだけ経って不意に手拭いが背中から離れて今度は困惑する。 どうかしたかと振り向こうとしたがそれは叶わなかった。 むにゅ。 「んっ……」 泡立てやすいよう少し硬めに作られている手拭いから一転、 とても柔らかい何かが二つ背中に押し当てられた。 それにはそれぞれ小さいながらも硬く自己主張する何かが付いていて、 もしや、という予想は、両肩に両手を置かれて背中の何かで上下に擦られ始めたところで確信に変わった。 大井は小さく喘ぐ。 「ん……、あ、あ……」 「……! 何やって――」 「背中、流してる、んっ、ですよ」 いつの間にかタオルも取っ払ったらしい。 せわしなく頭を左右に回すと、湯船のふちにタオルがかかっているのが見えた。 このやり方では風俗嬢だ。 これもまた演習後の相手の艦隊から聞いたのか。 せっかくの情報交換で妙な事ばかりを吹き込むのはやめて欲しい。 もう今後は演習が終わったらさっさと帰投するべきか? 「ん、ふ、ん、んっ」 一言で言えばはしたないと大井に非難する自分と、大井に奉仕されて馬鹿正直に喜ぶ自分がいる。 自分はどちらの姿勢を取ればいいんだ。 脳内で急遽開かれた軍法会議は、大井が起こす独特の快楽の荒波のおかげで一向に進まない。 大井の息遣いがずいっと左の耳元に近づく。 「あっ、てい、とく。気持ち、いい、です、か? ふ、う」 柔らかくて大きいタンクが背中でずりずり擦られる。 決して激しくはないが、リズムを取って断続的に息を耳に吹きかけてこう囁くので、 冷めた自分が少し小さくなり、喜ぶ自分が少し大きくなる。 どことは言わないが、文字通りの意味でも少し大きくなる。 ただ、冷めた自分はまだ死んではいないので、その問いには何も答えない姿勢を取る。 「何も、ん、言わない、なら、続けちゃい、ますよ、はあ……」 しかし、大井の奉仕に懸命に抗って突っぱねようという考えはない。 何も言わないのは、まだその気になれていないからだ。 それでも、あと少しもすれば素直になるだろう。 柔らかい中にある突起物がとても気になって仕方が無い。 「ふう、っ、っ、あっ」 正直こんなすべすべなもので擦られても垢がちゃんと落ちるとは思えないが、垢の事なんか今更どうでもいい。 大体毎日入っているんだからそこまで気にする必要もない。 「……前も洗っちゃいますよ」 待て。 いつの間に肩から離したのか、見えるは横から伸びる手拭いを持った白い腕。 「おいっ、前は自分で――」 「嫌ですか?」 「…………」 そう言いながら手拭いを持った手を動かす。 好きにしろと言ってしまったし、仮に嫌だと言ったところでやめる気はなさそうだ。 「……嫌じゃない」 止まっていた背中流しも再開され、前後を同時に効率的に洗われる。 こんな状況で世間話をする雰囲気なわけもなく、かと言って他に何を言えばいいかも分からず、 体の垢だけでなく、自分も状況にただ流される。 やがて体の前後が満遍なく石鹸で満たされた時、自分の魚雷にはもう充分に血液が装填されていた。 「ん……、あらあ?」 きゅ。 「いっ……」 何かに気づいた声を発してから、前を洗う手拭いを持った左手が引っ込んだかと思えば、 何も持たずにまた伸びてきた左手が自分の魚雷を掴んだ。 「……うふふ」 妖艶に小さく笑ってからそれを扱き始める。 先まで体を洗っていて石鹸でまみれた手は、摩擦係数を著しく落としていた。 大井がずっと主導権を握るこの一連の流れは、どう考えても風俗を模倣しているとしか思えないが、 こいつは分かってやっているんじゃないだろうな。 魚雷の根元から先までをぬるぬるした手で扱き、カリの部分を程よい力加減を持って通過するところもまた粋らしい。 「はあ……んむ」 「ッ!」 背筋を震わせられた。 大井が耳元でこちらが気の遠くなるような吐息を零してから、突然耳たぶを口に含んだからだ。 口内で舌をちろちろ動かし、弄ぶ。 「ちゅっ、……ちる」 「じゅ、ちゅる、じゅる、はあ……」 くちゃ、くちゃ。 ゆっくり扱きつつ、上も耳たぶだけでなく耳全体に唾液をねっとり絡めていっている。 温度が低めの耳は、大井の口に包まれ熱い舌で巻かれる事でやっと温められて、というより、熱くされていく。 「ふっ、んん……、れろ、はあ、ぺろ」 「っ、はあ……、はあ……、あぁ、むっ」 大井は、息を荒げて性感帯の一つである耳を丸ごと喰らう。 耳の中にまで舌を差し込み、精一杯演出しようと派手に唾液の音を立てる。 その間も魚雷の扱きは決してやめない。 愛撫もまた単純なものでなく、耳にせよ魚雷にせよ弄る位置を微妙に変えたり緩急をつけている。 耳は中を舐めたり外を甘噛みして、魚雷はただ扱くだけでなく先端を撫でたり玉を揉んだりする。 なんとも器用なものだ。 別に夜戦について指導したわけでもないのに、この上達ぶりは不思議だ。 「くちゅ、はあ……、ちゅう、んん、じゅる」 不言実行と言うのか、全ての意識を行動に注いでいるようで、口数はめっきり無くなっている。 この場では水の音が反響し、耳の傍から荒い息と粘液の音をしつこくぶつけられるだけだ。 自分の足はだらしなく開き、 体は押し当てられているタンクに拘束されたように振りほどく気になれず、耳も無抵抗のままに喰われる。 多分魚雷もだらだらと何かを垂らしていると思うが、段階的に速めくなっていった大井の激しい手付きでよく分からない。 やがては魚雷はただ扱くことだけに愛撫を絞られる。 大井は体の表面積をなるたけ広く密着させ、右手も私の右肩に置くのではなく、抱く状態に変えた。 これではまるで縋り付かれているような体勢だ。 ぱちゃぱちゃぱちゃぱちゃ! 「じゅっ、じゅるっ、んん、ちゅる、ああ、ちゅっ」 「んむ、ちろ、ちゅっ、ちゅぷっ、はあ、はあ、提督……」 なんだ。こんなときに。 こっちはもう達するところなんだが。 「えう、ちゅ、ん、ふ、はあ、ちゅうううっ、ああ、提督……」 「はあ、提督、ていとく……」 びゅっ! びゅくっ! びゅくっ! 「――――……」 もみくちゃにされた玉が、とうとう穴の開いた風船のように中身を一点の出口目掛けて魚雷の中を走らせた。 耳元で熱く呼称を発せられながら、自分は石鹸水より明らかに白く粘り気のあるもので床に汚い花火を描く。 熱気が充満する風呂場の中、一歩間違えれば逆上せかねない程に頭がくらくらした状態で背筋を震わせても、 達した直後に大井が漏らした、声帯をまともに使っているとは思えない微かな呟きを、 自分は何とか聞き取ることができた。 その意味が気になって考え始めてしまい、 その後は互いに言葉を発しないまま体を流してから共に湯船に浸かるという、 前戯がまるでなかったような空気に変わっていた。 二人で入るにはやや狭い湯船に並んで無言で浸かる光景は、端から見れば異様だろう。 例えば、対面して入って互いの恥部が見えたり、抱くように入って密着、という事も考えなかったわけではない。 が、大井はタオルを巻き直し、自分も腰に巻くためにわざわざ脱衣所まで取りに出た時点でその可能性は潰えた。 情事の誘いかと思っていたのに、前戯の続きをする気さえ起きないのだ。 そうさせた根源である大井の一声について、勇気を出して話を切り出してみる。 「……"見捨てないで"って、どういう意味なんだ?」 「……聞こえてたの?」 音が反響する風呂場では、小さな声でも充分会話ができた。 それにあれだけ耳に近ければ、蚊が鳴くより小さい声でも聞こえる。 冷静に考えてみれば当然の事なのに、大井は目を合わせてそんな事を聞き返す。 覇気のない調子はまだ長引いていたらしい。 「……最近また、失敗が多くなって、今日なんかも……」 再びお湯に向かってから、心の内を吐露し始める大井を黙って見つめる。 「提督に興味を持つ艦は増えるし、後になって考えてみれば、朝の提督の寝言も、私の名前なんて出てないし……」 名前までは口に出さなかったのか。 なんと中途半端な寝言だ。 全く口に出さないか名前ごと口に出していれば、ここまで悪い結果にはならなかったのかもしれないのに。 それと、自分に興味を持つ子が大井と北上以外にいるというのも思わぬ話だ。 「私より可愛い艦もいっぱいいるし、提督は私に興味なくしちゃうかなって……」 最後に自身に対して小さく嘲笑してから、それきり黙ってしまった。昼にも見たそれと同じだった。 やめてくれ。そんな笑顔は見ていて悲しくなってくるんだよ。 いつもの優しい微笑を浮かべてくれよ。 裏切ったら沈めるって自分で打った釘にも自信を持てないのか。 ……嗚呼、朝から晩まで全て自分が原因だったな。 あまりこんな事ばかりやってるとこちらが興味を尽かされかねない。 それでもこういう時、こうして寄り添うか腕で包む以上の事が考えつかないのだ。 「夢に出た相手もお前だったよ。戦争が終わるまで待てと断られたけど」 こんな男でも許してくれるのなら。 「でも、お前の調子が良くとも悪くとも、戦争が終わろうとも終わらんとも」 山と積まれた失敗を前にしても望みを捨てられず、自分は痛くしない程度に抱く力を強めた。 大井がしたように、自分も恥なく自分の内を曝け出す。 できれば失敗ばかりの自分を受け入れて貰いたい。 「私は、すぐにでも大井と一緒になりたいと思う」 「……本当? 他の艦に興味はないの?」 北上には悪いが、北上でも大井と同じように見る事はできないんだ。 大井だけだよ。 「……まだ足りないわ」 ……今晩、一緒に寝ようか。 「それは、どっちの意味で?」 両方のつもりだが、嫌かな。 「いえ……。そう聞くと私、燃えちゃいます」 大井は静かに覇気を取り戻していた。 振り返るその横顔は、気のせいかきらきらしているようにも見える。 胸のわだかまりを解消した頃には体も充分温まったので、一言添えてから先に風呂を上がった。 畳に敷いた布団に枕を二つ並べながら声に出さず一人笑う。 明かりを電気スタンド一つに任せて布団に潜り、文庫本を片手に考える事は本の内容ではない。 手持ち無沙汰の為に何となく読み流しているだけで、 実際は隣の枕の主とさて何を話してやろうかと頭の引き出しを漁っている。 小学生の遠足前日の気分に共通するところがあって、やはり自分は子供だなと少し嘆息する。 きい。 ……かちゃん。 大井は扉の開け閉めをなるべく控えめにして入室し、靴を脱ぐ。 掛け布団を上げると、もう一つの枕にもそもそと潜り込んできた。 ところで、睡眠時に見る夢とは、自分の知識、記憶、想像を元にして作られるらしい。 だから、例えば博識だと知っている人に夢の中で何か質問をしても、 自分がその答えを全く知らないとその人も答える事はできないし、 その人が何と答えそうか自分が想像できていても、それは自分の独断と偏見の塊でしかないため、 結局は自問自答となんら変わらないと言える。 だから、夕べの夢について気になった事を天井を見ながら、隣で横になる本物に尋ねてみた。 「……私は、北上をお前と全く同じように見る事はできないんだが、北上の傍にいてやるべきなのかな」 こんな事を聞いたら、大井は激昂するだろうか。 解釈の仕方によっては、下手な同情と取られても仕方がない。 愛にも色々あるが、それでも自分が北上に向けるのは『親愛』なのだ。 大井は、少しも待たず答えを出す。 「別に、北上さんから離れなきゃいけない理由はないでしょう?」 しかし大井の反応は、自分の予想していたものとは毛先程も合わない、平静したものだった。 大井の答え、というより考えている事は、自分が想像していたものとは、もしかすると根本から違っていたのかもしれない。 「まずこの戦争が終わったとして、提督は、北上さんや他の皆から離れるつもりなんですか?」 「……いや、そんな事はないけど」 「なら、何も気にする事はないでしょう?」 この疑問を一人で考えても悩んでも分からなかったのに、人に聞いただけで、呆気なく打ち破られた。 別の視点からも物事を見るのはとても大事だ。大井はそれに気づかせてくれた。 全く。大井はどの面においても私より優秀だ。 私なんかより大井が艦隊の指揮を取るべきじゃないのか。 「戦いながら他の艦に命令しろっていうんですか? それじゃ存分に戦えませんよ」 そうなるな。 海戦の時は眼前の敵を討つ事のみ考える大井らしい回答だ。 にしては、今日は不思議と著しい命中率の低下が見受けられたが、それについてはどうお考えで? 「それは……」 責めている訳ではないが、こんな事を言われて大井が黙ってしまうのを責める事もまたできない。 真っ正面に敵を捉えて命のやり取りをする艦娘の視点がどのようなものか、 自分には知る由もないからだ。 その艦娘を利用して海や陸を守ろうとする自分ら指揮官のその想いと期待を、 どれほどなら艦娘に背負わせて良いのか、非常に難しい問題だ。 大井は仰向けで天井を見る頭を少しだけ向こうに回したので、 横顔を伺う事ができなくなってしまった。 「……よく、分からないの。もう睡眠時間は削っていないし」 「…………」 「もしかしたら、提督に見捨てられたくないとか、褒められたいとか、焦ってるのかもしれません。 前は、『重雷装艦にまでなれたんだから、沈んでも悪くないかな』って考えていたのに……」 所謂深夜の気分なのか、あるいは部屋の明かりが少ない事によるものか、 そんな事を大井は抑揚なく、まるで他人の話のように明かす。 「提督は、こんな私でも艦娘を続けてほしいって、思いますか?」 大井はやっと頭をこちらに回してくれたので、大井とは十五サンチ程の距離で見つめ合う状態になる。 壁際に寄せた炬燵の上の大きくない明かりが布団一つを照らす中、 影のかかった今にも暗闇へ消えてしまいそうなその顔に、誰が無理強いをできようか。 最高戦力が艦隊から抜ける事でもたらされる影響はあるだろうが、 その穴をカバーできなくはない筈だし、何より大井の意思を尊重したかった。 「私としては、傍にいてくれればいいんだ。 続けるかやめるかは自由だが、大井がどっちを選んでも見捨てる事はあり得ない」 大井の、艦娘を続けて欲しいか否かの問いにはこのように曖昧な事しか言えないが、これが自分の答えなのだ。 これを時間をかけて意味を咀嚼したらしい大井は、泣くのを堪えるように顔を歪ませた。 瞼は瞳が何とか見える程度まで下ろされていて、唇もぴったりと力が入ったように閉ざされている。 この回答だけではやはり不充分だったのか。 「す、すまん!」 しかし弁解やら慰めやらは何と言っていいか分からず、謝罪の言葉しか出なかった。 行動で表す慰めとして、慌てて仰向けの体を九十度回して寄り添い、 片腕を大井の体の上から背中に回す。 顔はさらに近づく。 開かれたその目が潤んでいる事は、光が少ししか当たっていなくてもこの距離で分かってしまう。 それを直視できなくて、思わずこちらが瞼を下ろしてしまった。 大井をこうしたのは自分なのに。 「ん……」 これは大井の息遣いだ。 それを聞いたと同時、自分の瞼は開かれた。 何故自分は目を瞑った大井に脈絡なく唇を押し当てられているのだろう。 押し当てられていると言っても大井が顔を何とか前に動かして触れさせている程度だが、 自分には唇の柔らかさと熱が充分に伝わる。 「は……」 たった一秒程で離れた。 これではいつもなら名残惜しさが残るだろうが、今は戸惑いが残る。 「……私の回答がショックだったんじゃないのか?」 「ショック? 安心してるんです。すごく」 枕に頭を預けたまま首を振るような動作を小さく行って、大井は涙を一滴流す。 つー、とそれは重力に倣って枕へ流れたが、大井は気にせず、潤んだ目を隠そうともせず続ける。 「あの時の人達はみんな、お国の為だなんて言って、国の物を好き勝手に使い潰して」 「でも提督は、私達を大事に使ってくれるから、私は、『この人を好きになってよかった』って……」 捻りのない直接的な告白は、何度聞いても全く飽きない。 自分も大井に大事にされていることが、すぐ、よく分かる。 自分もまた、大井を更に大事にしたくなる。 横になりながらなので片腕で申し訳ないが、この拙い抱擁にあらん限りの想いを込める。 「あ……、提督、何ですか?」 なんだ。 ドラマのような空気はもう終わりか。 突然飛び出る場違いなまでに惚けた科白が、自分らの性格を短く表しているようで、笑わせてくれる。 密やかに笑う様が、大井をほんの少しだけむっとさせたらしい。 「……笑ってないでちゃんとやってください」 「ふっ、くく……ちゃんと、とは何を?」 笑いを堪えて抽象的な部分を問い返す。 実のところこういう事ではないか、と半分程は分かっているのだが、 男の子というのは好きな娘を困らせるのが性分だからな。 烈風をどれだけ積もうが、付いて回る性分というものは撃墜できまい。 思惑通り、大井は多少恥ずかしげに視線を枕にやって言い淀む。 嗚呼、面白い。可愛い。 「だから、その、両手で――」 「はいはい。体、浮かせて」 「……ん……」 敷布団側の片手も大井の体をくぐらせ、大井の背中で掛布団側の片手と邂逅を果たす。 掛布団側の足も大井の両足に被さるようにして、 目を閉じて触覚を研ぎ澄まし、最後に心ゆくまで腕に力を込めれば、柔らかい立派な抱き枕の完成だ。 抱き枕が漏らす鼻息が口元に当たってこそばゆい。 「んっ、力、入れすぎなので、提督に二十発、撃っていいですか……っ」 「……なら、撃てないようにもっときつくしないとな……」 「あぁっ……もう……」 そうそう。 抱き枕は持ち主に逆らっていないで大人しく抱かれていればいいんだよ。 こうして目を瞑っていれば、そのうち深い眠りにもつけるのではとの考えが過ったが、そうは問屋が卸さないらしい。 「ん……」 生意気な事に抱き枕が再び口をつけてきた。 もう二度目なので驚かず、ただ受け入れてやる。 かと思えば、またすぐに離れてしまった。 目を開けてみれば、互いの顔の距離にして僅か五サンチくらいか。 とても近い。 「さっき自分で言った事、忘れてませんよね?」 「……そうだな……」 危うく寝るところだったがな。 早速動かしやすい上の片腕を、大井の装甲の裾から差し入れて弾薬庫をまさぐる。 「……お腹なんて触っても……」 気持ち良くさせたいとかではなく自分が触りたいだけだ。 気持ち良くなくても我慢してくれ。 ここは中々に引き締まっていて、見なくても触っただけで無駄がない美しい艦体をしている事が分かる。 側面が緩やかな曲線を描いていて、何度でも撫でてみたい。が、先へ進む。 大井はどこを触っても本当にすべすべだなあ、とぼんやりした考えでタンクに辿り着く。 手の中で一番長い中指の指先がタンクに、ふに、と無遠慮に当たった。 「っ……、乱暴にしないでください、燃料が漏れちゃいます」 小突いたくらいで穴が空く訳ないだろう。 しかし痛くする理由はないので、陶器製の高級お椀よりも大切に優しく扱う。 その事を念頭に置いて撫でる程度にまさぐっている途中、ピーン、と頭の中で閃きの音が響く。 「ここを大きくすれば、航海時間が伸びるのかな?」 「知らな、ぁ」 むにゅ。もみもみもみ。 「んう……っや」 「嫌?」 「いや……っ、じゃない、です……」 改修も並行して行えるとは、何とも効率的な夜戦があったものだ。 自分は顔が気持ち悪く歪まないよう精一杯堪える事で忙しかった。 口の端に力が入っているのを、多分大井は気づいているだろう。 何せこの距離だ。 そして私が大井に触れる事ができるという事はつまり、大井もまた私に触れる事ができる訳で。 大井より背がある私のズボンまで手を伸ばすのに長さが足りないのか、 少し身を下にずらし、それに倣って顔もやや掛け布団に隠れるのが微笑ましい。 言ったら拗ねるかもしれんな。 大井は器用に片手だけでベルトを解除し、ズボンを緩めてから探索の手を入れていく。 「ぁ……提督のも、こんなになってるじゃないですか」 「魚雷、好きだろう?」 「私の知ってる魚雷はこんなに熱くないですよ」 「提督の魚雷って?」 「熱くって、素敵、って何言わせるんですか」 今自分らがやっているのはテレビで見る漫才かコントの類か。 二人でくすくすと一頻り笑いあってから、事は再開する。 先程一回出したので自分の感度は幾らか落ちているが、まだ行ける。 下から上に向かって捻りながら引っ張るような、変わった扱き方だ。 体勢的にこのやり方が合っているのだろう。 風呂場では大井に一方的に攻撃されるだけだったが、いつまでもそれでは格好が付かない。 身長一五二サンチの大井の下部装甲まで腕を伸ばすのは、難しいものではなかった。 手探りするまでもなくまず外側の装甲を捲り、秘所をカバーの上から柔く擦るが、大井は拒まない。 「直接じゃ、ないんですね、っ」 「っく、直接か。今は、我慢してくれ」 「そういう、んっ、の、自意識過剰、って言うんですよ、あっ……ぁ」 ならばそんな口が叩けなくなるまで、ずっとカバーの上から擦るだけだ。 ある程度まではやや強めに擦ってやるが、そのうち擦るだけでは満足できなくしてやろう。 それぞれ手一つだけを使って相手を攻める防御なしの一騎打ちは、練習航海が一度できる程度の時間を使った筈だ。 「あぁっ! はぁ……はぁ……」 ぐっしょりと濡れたカバーの上からでも分かる突起物を指で弾くと、 大井は甲高く啼いてから、口呼吸する。 そこは結構な性感帯だと聞いている。 それに手をつけてからは、またあまり刺激にならないような部分を柔く擦る。 「ていとく……まだ、足りないわ……」 「だから?」 「う……、ちょく、せつ……」 大井はいつの間にか扱く手が止まっていたので、主導権はこちらに移っていた。 ただ大井も長く耐えたので、こちらもいい加減触りたい欲のままに余裕なく、最後まで聞く前にカバーの中に手を入れる。 もし素面なら、自分はきっと手を突っ込む事に躊躇いを覚えるだろう。 何せそこは源泉と化してしまっているのだ。 もはやこのびちょびちょのカバーは使い物になるまい。 バケツでぶちまけたかのように潤滑油が溢れた状態では、 遠慮する必要はサーモン海域まで探しても見つからないと踏み、すぐに穴に中指を差し込む。 くちゅ。 「あ! むうっ!」 恥を知るらしい大井は、口元の布団を噛み締めて嬌声を抑えようとした。 この執務室が防音加工されているから、そんな事をしなくても表に漏れる事はないのに。 そして、布団を噛もうが下から発する水音ばかりはどうにもできないだろう。 「うわあ……」 すっかりほぐれているそこは中指をそのままに、薬指も付け根まで抵抗なく受け入れた。 女ってのはここまで濡れる事ができるのか、と、新たな発見を前にこれまた場違いな声が小さく漏れた。 経験の浅い男の分かりやすい反応だな、と情けなく思ったが、もう遅い。 これが大井には別の意味にでも聞こえたのか、眉を潜めてこちらを睨む。 それでも布団は口にしっかり咥えたまま。 その噛まれるものが布団から自分の鼻っ面に変わらぬうちに二本の指を動かす。 「っ! ……っ!」 粘っこい音がする。 どろどろの重油とも違う、独特の水質を表現するその音が、指をくいと曲げて中を抉る度に耳にへばり付く。 指だけでなく手全体を動かすようにエスカレートさせてみれば、 大井はピクピクと痙攣しながら口の端から声のない息を漏らす。 軍艦ではなく音楽の指揮者になった気分だと面白がるのもほんの一瞬に、 布団の中から自分の手をゆっくり取り出して、無色透明の潤滑油にコーティングされた中指と薬指を口に含む。 「ん……」 「!?」 すると、大井は敵艦を照らす探照灯のように目を見開いた。 と言っても、明かりの少ない部屋を輝かせる程の光に自分の目が潰された、とか厄介な事にはならず、 口に大井の味が広がって自分の性欲にぐんと拍車がかかっただけだ。 「……少し、しょっぱいな」 「~~っ! 変態ですかっ」 「お前もやった事だぞ」 「あ……」 最初に大井が夜這いに来て私のを飲んだ事、忘れたんじゃないだろうな。 あれは自分にとっては衝撃的な出来事だったんだが。 しかしそんな事を追及している場合ではない。 「……この体勢、好きだな。お前」 「提督はお嫌いですか?」 「いや、好きだよ」 行為の後寝てしまう事を考えて、ストーブに火は起こしていない。 寒さを凌ぐ為に、布団を被ったまま服も碌に脱がず私に跨って上体を低くし、 私の頭を挟んで布団に両手を置く大井の発射管に、自分の魚雷を収めるべく手を添えて場所を探る。 見えないと場所が分かり辛く、度々周囲に当たる。 「ぁ、もう少し、手前……」 多少曲げたりして融通の聞く魚雷を言われた通り動かすと、大井はほんの僅か腰を下ろした。 すると、先端がめり込む感触がしたので……。 「ん……ふわあああ!」 すとんとすんなり行った。 にしては、大井は軽巡時代の悲鳴に色気が添付されたような大きな嬌声を上げた。 感度良好だな。こちらとしても張り合いが出てくる。動くのは大井だが。 「……ぁ、ふぁ、あ、ん、んん……!」 割とすぐに加速していくようだ。 先程の焦らしを意識した前戯が効いたのかもしれない。 「あ! やだ、止まらな、ふぁあ!」 こちらも最大限に快楽に溺れ、抗う。 大井の発射管も練度が上がっているのか、 自分の魚雷にちょうどいい大きさに形が変わっていて、以前よりスムーズに大きく動かせるようだ。 もちろんどう動かすかは大井にかかっているのだが、こちらが注文を付けるまでもなかった。 「あうっ! はあ、ああ!」 自分らは見つめ合って互いを求める。 自分が大井をここまで喜ばせているのだと、大井の色気に満ちた、寒さの欠片もない顔を見て実感できる。 愛しい感情がこみ上げてくる。 嗚呼、大井。私の大井。 「キス……」 「ぁ、え? ……ふふっ」 小さく漏れた私の声も拾う大井は上下運動をやめ、 軍服に包まれた私の胸板に両腕を置いて顔を近づける。 自分が瞼を閉じると同時、閉じかけの視界の中、大井も瞼を閉じるのが見えた。 直後口に来る感触あり。 「ん、ん、ぅ」 「ちゅ、ん、ふぅ」 「あぁ、ちゅく……、ん、うぅ……」 体を重ね、舌まで連結しても、触れ合いたいという欲は止まらないまま深まるばかりで、 左手は背中に添え、右手は頭頂から後ろ髪までを何度も梳かす。 左手には傍まで寄ってほしいという想いが、右手には精一杯の愛でたい想いがある。 温かい。 やはり艦娘と言っても、一緒にいてくれたら人肌恋しさを満たす事もできる、普通とは少し違うだけの人間なのだ。 口を離し、体を完全に預けてきた大井は頭を私の右肩に埋める。 髪が右頬をくすぐる。 「はぁ、……温かい、ですね」 「ああ……」 ストレートの髪を撫でる手が震える。 知ってしまったこの温もりを喪った時の事を考えてしまい、怖くなったのだ。 不安にさせたくなくて大井には大口を叩いたが、本音としては、 幾ら自分の指揮に自信があっても、運命を見る事ができない限りは、絶対に喪わないようにできるとは言えない。 「提督? 手が震えてますよ……」 それを大井が気づかない筈がない。 私の肩に埋めていた顔をあげて、私の顔を覗き込もうとする。 いよいよ本当に風邪に罹ったように、少しの汗をかいて上気した顔が、眉尻を下げて心配そうに見下ろす。 軍人とはその役職柄、冷徹な人間が向いているだろうが、自分含めそうでない軍人等珍しくない。 かく言う自分はお世辞にも軍人に向いているとは言えない。 配属されている艦娘の殆どの前では自分の考える『軍人らしさ』を演じているが、 せめて大井には、自分の弱さを受け入れて認めてほしく、顔を逸らせという脳の命令を撤回する。 大井はとても優しい顔を見せてくれた。 「怖いんですか?」 今の自分は弱々しい声をしているに違いないので、声に出す代わりに頭を小さく縦に動かした。 大井は再び私の右肩に顔を埋めて、右手で頭を包むように撫でてくれる。 「……大丈夫ですよ、大丈夫……」 こうは言ってくれるが、自分が何に対して慄いているのか、大井はきっと分かっていないだろう。 必死の思いで口元の大井の耳に、殆ど喉を使わない小声で伝える。 「大井は沈まないよな……?」 ここにきて、艦娘として活躍してほしい、使命を帯びた艦娘を縛り付けてはいけない、等の考えと、 艦娘をやめさせれば喪う事はなくなる、という考えの、盛大な葛藤を直視してしまった。 依存しているとも言えるまでに大井の不調を気にかけている事に気づいた。 自分の体に大井の体を押し付けようとする両手に尚、力が入る。 「……それは提督次第ですけど」 なるほど、現実的な答えだ。 客観的に考えればこれこそが模範解答である筈なのに、 自分の中ではこっそりと諦めムードが流れようとしていた。 しかし大井の科白はまだ終わってはおらず、私の耳元で囁きかける。 「十年以上も練習艦をやってきた私が、沈むなんてありませんよ。何なら、提督にも教えてあげます」 「……それは心強いね……」 これが、幾人もの軍人見習いを指導してきた練習艦ならではの余裕というものか。 大井が持つ珍しい経緯もあって、自信と余裕に満ちたその科白は非常に説得力があり、 大井に問いかけた自分の疑心は、基盤が豆腐でできていたかのように脆く崩れた。 練習艦にだって調子のいい時と悪い時はある。 こうして脱力して両手からも力がなくなった隙に、大井は上体を起こした。 「あ……」 「……うふふ」 温もりが離れてしまい、切ない声が漏れる。 電気スタンドに照らされるようになったおかげで、大井が私の顔を見下ろして小さく笑っているのが分かった。 私が漏らした声が面白かったのか、それとも力の抜けた顔が面白かったのかは、分からない。 大井は襟首に装飾されている白いスカーフを解いてするりと抜き取り、装甲を緩めて肩を肌蹴させる。 最後に頭に被さっていた布団を鬱陶しげに手で退かした。 もしかすると、暑かったのかもしれない。 「手、つなぎましょう……?」 呆然としていて言葉の意味を理解するのに少し遅れた。 掌印のように差し出された両手に自分のをそれぞれ合わせる。 大井の指と指の間に自分の指を挟み込み、全ての指が互い違いに合わさってから、 自分らは初めて手を握る事を覚えた赤子のように、一本一本確かめつつ手をやっと握り合った。 「あは」 久しぶりとも思えるくらいだった。 大井は、さながら錆びてくっついてしまった魚雷発射管から魚雷を抜くようにゆっくり腰を持ち上げた。 ずるりと引き抜かれて、今までじっとしていた反動か急に刺激が来る。 かと思えば、糸が切れたように体を落とした。 「んあっ!」 一度だけで滑りが回復したのか、規則的に上下運動を始める。 くちくちと、ぐちゅぐちゅと、音も変化していく。 自然と両手にも力が入ったり抜けたりし、それに反応して大井も握り返してくる。 「ぁ、あ! あん! 提督っ、どうですかぁ……? どうなんですかっ?」 「はぁっ……」 「気持ちいいですかっ、あ!」 「うっ、気持ち、良くないわけ……」 「そうですよ、ねえ、んっ、こんなに、硬くっ、してるんですから……」 自分のはとっくに限界まで硬くなっている。 やはり一回出したとは言え、それを感じさせない程、大井とは相性が良くなっていたようだ。 練習艦とは夜伽のいろはまで知っているものなのか。やはり敵わないな。 いや、そういう事は最近になって自分で予習していたのだった。 私より上であろうとする姿勢へ尊敬し、その裏に垣間見る慎ましい努力に微笑ましく思うのもつかの間、 指を絡め合う両手と形の合った性器で強く結ばれる事で、精神的にも昇り詰めるのは難しい事ではなかった。 ここで、大井の嬌声の中に、今度は大井の心の弱みを具現化した科白が混ざる。 「あっ! 提督っ、提督は、裏切りませんよねっ?」 正直、何を言っているんだろう、と思う。 裏切ったら沈めるだの、絶対に見捨てないだの、散々言い合ったのに。 自分らが互いに存在を必要としあっているのは、今分かった事ではないのに。 それでも、大井に蔓延る不安を打ち消す為ならきっちり応えてやる。 「裏切らない。っ……、私はここにいる、ずっと大井の傍にいる」 こうして言葉に出すと、自分の気持ちも更に骨組みを補強するように熱くなった。 それでも大井はまだ納得しないらしい。 「本当っ? っ、ずっと……?」 「ずっとだ」 「んっ、ふふっ、……ちょっと、嬉しい」 "ちょっと"だけなのか。 しかし、大井の口の端が持ち上がったり、締まりが強くなったりと、変化は"ちょっと"ではなかった。 嗚呼、やはり、二人とも、目に映っただけでは安心できないのだ。 目に映して、声を聞いて、体と心を絡めて、やっと心の震えは鎮まるのだ。 互いの存在を確認しあうようなこの応酬は、このひととき、"ちょっと"ばかりでなく。 「……ッ!!」 「ふああ……!!」 これからも、幾度となく繰り返すのだろう。 繋がった手と性器、腰に乗る大井の体重等の感覚を強く感じ、 目を瞑り、眉間に力を入れて達しながら、自分はそんな事を考えていた。 …………………… ………… …… ぱち、と目を開けるとまず飛び込んでくるのは、少しだけ茶色がかった綺麗な髪だった。 私の背中で両腕を固め、私の胸に顔を埋める大井は、目を覚ましているのか確認できない。 窓の外を見れば、夕方とも間違えそうな微妙な明るさの空と大きめの雲が広がっている。 今日は天気があまり良くないかもしれない。 億劫に思いながら右手で優しく目の前の頭を撫でる。 「提督? 起きてるの?」 腕の中から、普段よりゆっくりとした声がした。起きていたらしい。 大井が寝ている自分に何らかの行動を起こす事を期待して、 返事をせず、寝ぼけている体(てい)で頭をゆっくり撫で続ける。 「……愛してます」 軽い気持ちで藪を突くのは、確かに危険だった。 静寂にぽつとこの科白だけが残る。 温もりを抱いて眠りから覚め、安らいだ精神状態でこんな言葉を聞ければ、今日は普段より頑張れる。 「提督、やっぱり起きてますよね」 「……おはよう」 予想できず愛を囁かれて、反応するように頭を撫でる手が止まれば、ばれても仕方がない。 窓を見ながら空と大井に挨拶する。 「今日は夢を見なかったよ」 「……だからなんですか?」 「夢でもまた大井に会いたかったな、とね」 「虚像ですよ、夢なんて」 「……夢がないな」 起きたと分かった途端大井は素っ気なくなった。 かと思えば、私の背中に回す腕の力を強めてこんな事を囁く。 「それに、夢の私は断ったんでしょう?」 「戦時中だから、なんて理由で私は断ったりしませんよ」 自分の頭の中の書類に『指輪と書類一式の購入』と書いて重要の印を押しておこう。 大井がやったように、自分も抱きしめる力を強めて、ただこう呟いた。 「……私も愛してるよ」 胸に顔を埋めたまま、起床時間まで何分あるかと何度も問う大井を微笑ましく撫でつつ、 起床時間を過ぎればまた怒られると分かっていながら、自分は実際の残り時間より長い時間を大井に伝え続ける事にした。
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/31560.html
提督冰竜 ジャン・バール R 水 (7) クリーチャー:フリージング・ドラゴン/竜の一族 6000 ■このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から3枚をすべてのプレイヤーに見せる。その中から、水の竜の一族をすべて自分の手札に加え、その後、残りを好きな順序で山札の一番下に置く。 ■このクリーチャーはブロックされない。 ■W・ブレイカー ■相手のカードの効果によって、このクリーチャーが自分の手札から捨てられる時、墓地に置くかわりにバトルゾーンに出してもよい。 作者:翠猫 DMAE-15「絶対極度!トリニティ・ザヴァイア!」収録。フリージング・ドラゴンの竜の一族。 竜の一族の提督。マッドネスと水の竜の一族を持ってこれるブロックされないW・ブレイカー。 名前はフランス海軍の戦艦「ジャン・バール」から。 フレーバーテキスト 「やぁ、利用された気分はどうだい?」-《提督冰竜 ジャン・バール》 収録エキスパンション DMAE-15「絶対極度!トリニティ・ザヴァイア!」 関連 《機械提督サウンドシューター》 竜の一族の提督サイクル 《提督電竜 ギディーオンフェール》 《提督冰竜 ジャン・バール》 《提督毒竜 トルネイド》 《提督炎竜 リンドウ・ブルーム》 評価 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/93.html
「うむ、よくやった」 「でしょー?」 本日の成果は九九艦爆、瑞雲、烈風、謎ペンギン。言うまでもなく装備の開発である。 我が鎮守府の台所事情はこういった組織の例に漏れず厳しく、決戦時はともかく日々の鍛錬に戦艦娘たちを存分に活躍させる余裕は残念ながら無い。 必定、主なダメージソースは空母や軽空母たちに頼らざるをえず、性能の良い艦載機の開発は急務だった。 前任の艦載機開発担当であった赤城さんは、戦力面では申し分なかったものの装備の開発は苦手だったようで、現在は赤城さんを引き継いだこの蒼龍が、秘書兼艦載機開発を担ってくれている。 「ちょうど空母が増えて艦戦が足りなくなっていたところだ。 そろそろ零式52型は引退だな。いつもながら助かるよ」 「へへ、もっと褒めてくれてもいいんですよー?」 彼女はたしかに戦力面で一航戦に劣るものの、装備の開発は比較的得意なようで、現在うちに配備されている強力な艦載機たちのほとんどが彼女の手によるものだ。 「千歳型、飛鷹型に鳳翔、祥鳳…うちの軽空母たちにも最新型がほぼ行き渡ったしな。 これで鍛錬や撃退任務が捗る。これからも頼むよ」 「うん、任されよう!」 加えて、彼女は装備開発を褒めるとたちまち上機嫌になるのだ。『以前』は褒められ慣れていなかったのだろうか。 何にせよ、どんな娘でも自分の言葉で喜んでもらえるなら嬉しいものだ。 「欲を言えばまだ少し足りないが、一段落したし…そうだな。蒼龍には褒美を与えよう」 「え…褒美…ですか?」 「そう、ご褒美だ。装備以外にも秘書として日ごろ世話になっているし、君の働きには報いてやらないとな。 何か欲しいものはないか? 貧乏なうちでもボーキサイトの1000や2000なら出してやれるぞ。 あるいは休暇とか、間宮さんアイス食べ放題とか…」 「それは…確かに魅力的だけど…」 ? 何やらちょっと様子が変だ。申し出が気に入らなかった…わけではないようだが。 まさか、もっと大それたものをご所望なのだろうか。先ほど言ったボーキ2000は結構奮発したつもりなのだが… 「…そうですね。提督、あれ何ですか?」 「ん?……っっ!」 蒼龍が指差した方向に気を取られた瞬間、俺の視界いっぱいに彼女の顔が映り、唇に何か柔らかい物が触れたのだ。 一瞬の出来事。 蒼龍はすぐに離れたが、俺は椅子に座ったまままるで石になったみたいに動けなかった。 次第に事態を飲み込み、理解し、今更ながらに頬が熱く、鼓動が早くなっていく俺をよそに、 「ひひっ、ご褒美。頂いちゃいました」 いたずらっぽく、しかし俺と同じくらいに頬を染めて笑う蒼龍の姿があった。[newpage] *** 元々俺は何か下心があって彼女を秘書に任命したわけではない。 当時、艦載機開発が期待できるのは、それが不得手な赤城さん以外に蒼龍しかいなかった、というだけである。 試しに彼女にやらせてみたら、しょっぱなから流星と彩雲を引き当て、めでたく開発要員と相成ったのである。 それからは彼女の相方である飛龍を始め正規空母も揃ってきたが、ゲン担ぎもあり艦載機の開発と、ついでに秘書も蒼龍に頼んできた。 そこに他意はなかったが、先日の一件以降、当然というか何というか。俺は蒼龍を意識せざるを得なくなった。 というのも… 「…21型零戦、零式水偵、謎ペンギン、流星改…か。流石だな」 「へへー。…提督、またご褒美…欲しいです」 「…っ」 俺の直ぐ側まで身体を寄せて囁く蒼龍。 そう、彼女は装備開発が成功するたびに、その、『ご褒美』をねだるようになったのである。 や、別に、決して嫌というわけではない。むしろ望外の慕情を向けられることには未だに現実感はないものの、間違いなく嬉しい気持ちの方が大きい。 しかし、俺はこの手のことに決定的に疎かった。慣れていなかったのだ。 ましてや俺は提督、艦娘たちの全てを背負う立場である。特定の艦娘に肩入れすることなど決してあってはならないのであり、 「…ちゅ、はむ、ぅぅん…ぷぁ」 俺が思考を空回りさせている間に、蒼龍は俺の肩を抱いて唇をついばみ、舐っている。 困ったことに『ご褒美』は回を重ねるごとにエスカレートしており、唇を触れさせるだけの行為から、次第に情熱的な、舌と唇を積極的に絡ませる、恋人同士のするそれと変わらないものになっていた。 どうすればいいかわからない俺は、ただぼんやりと彼女の蕩けた表情を眺めながら、柔らかい女性の唇と唾液の生々しい匂いを感じることしかできないでいる。 「ちゅ。ふふ、ごちそうさまでした…提督、また、期待しててくださいね。 …もちろん、装備の開発に…ですよ?」 あどけない顔つきとはチグハグな艶っぽい声で終わりを告げられ、俺も夢から覚めたように執務室を見渡す。 蒼龍は何事もなかったかのように自分の席に収まり、仕事を再開している。 おそらく俺が頼んだ、遠征結果と戦意高揚状態の相関を調べるデータの整理だろう。 しかしその頬は上気したままで、表情もどこか嬉しそうな―― 「!」 不意に目線を上げた蒼龍とまともに目が合ってしまった。 慌てて自分の仕事を再開するが、俺の心臓が平静を取り戻すにはもう少し時間がかかるようだ… *** 「…」 報告書をめくりながら、俺は内心驚いていた。 確かにレベリングはそれなりに熱心にやったが、難所であると思われていたカスガダマ沖海戦を、我が第一艦隊はわずか5回のトライでHPゲージを削りきり、あっさりと突破してしまったようだ。 「どーですか司令!私だってやれば出来るんですよ!金剛お姉さまと一緒なら誰にも負けません!」 「ワタシもexcite fightしたんですヨー?でも、敵に与えたdamageは榛名には敵いませんけどネー!」 「そ、そんな…榛名はただ、夢中で…」 「吾輩にかかれば、この程度当然だな!」 「潜水艦は徹底的に無視。潜水艦に攻撃できない艦を集めて夜戦で止め。 私の計算と司令官さんの戦術、ばっちりはまってましたね。さすがです」 「…ああ。お前たち、よくやってくれた」 いつになく執務室が賑やかなのも無理もない。ここ最近になかった大戦果だからだ。 特に、ボスにとどめを刺しMVPまでかっさらった利根は鼻高々である。 しかし、俺の目線が吸い寄せられるのは… 「いやあ、さすがですね皆さん。私が支援した甲斐がありました」 「oh!蒼龍が敵の艦載機をほとんどstrikeしてくれたから私達砲撃に専念できたネ!Nice assistだったヨ!」 「むう…確かに敵のヒコーキはほとんど飛んでこなかったな。吾輩も楽だったぞ」 「今回の蒼龍さんには防空を全てお任せしてましたからね」 そう。今回蒼龍はダメージ源となる艦攻隊・艦爆隊を一切積まず、艦戦と彩雲のみを載せた極端な構成だったのだ。 夜戦重視の戦術のため普段は2隻入れている空母を一隻に減らし、その分艦攻隊・艦爆隊を積むスペースが無くなってしまったのである。 結果、蒼龍は火力的には一切貢献できない構成となってしまった。もちろん、指示したのは俺である。 勝利するためとはいえ、昔からの付き合いである彼女を完全に裏方に回す形にしてしまうのは正直心苦しかったのだが、この戦果ならきっと彼女も納得してくれることだろう。 が… 「提督…私、今回すっごい地味でした」 第一艦隊の面々が意気揚々と自分たちの部屋へ引き上げたあと、取り残された形となった蒼龍がつぶやいた。 「…仕方ないじゃないか。彩雲と艦隊をカバーする分の烈風を積んだら艦攻艦爆積めないんだから」 「じゃあ、じゃあ、艦載機数の多い加賀さんを使えばよかったじゃないですか!」 「い、いや、確かにそうなんだが…」 何故か不機嫌である。いや、不機嫌とは少し違うような…? 「提督、加賀さんもちゃんとレベル上げしてたじゃないですか。私、知ってるんですよ!」 「そりゃお前はずっと秘書艦だったしな…」 「じゃあどうしてですか」 お前を外したくなかったからだ、などと恥ずかしくて言えない。 「…まあいいです。そりゃあ、私だって僚艦の防空は大切な仕事だってわかってますよ。 でも、私も攻撃に貢献して、MVPを取りたかったんです。…提督のために」 最後に付け足された語に激しく動揺しているのが自分でもわかる。 「い、いや、蒼龍はよくやったよ。蒼龍がいなかったら今回の勝利は覚束なかった」 「本当ですか?」 「ああ。真のMVPはお前だ」 「じゃあ…『ご褒美』、下さいよ。いつもより、豪華なの」 ようやくわかった。不機嫌ではない、これは… 「今夜…部屋で待ってます、からね…」 思わぬ追い打ちを食らい、固まった俺が気づいた時には、彼女は既に執務室からいなくなっていた。 *** 無論いくら疎い俺でも、蒼龍のセリフがどういう意味を持ってるのかぐらいはわかる。 残っていた仕事を終わらせ(まるで手に付かなかったのは言うまでもない)、身を清めた俺は、神妙な心持ちで空母寮を訪れ、蒼龍の部屋の前に立っていた。 意を決して、ノックする。 コンコン。 「はーい、どうぞ」 いつもと変わらぬ…ように聞こえる蒼龍の声に幾分平静を取り戻した俺は、ぎこちない動きでドアを開けた。 「ふふ、いらっしゃい」 「ああ…」 艦娘たちの部屋は簡素ながら、要望に応じて和室と洋室に振り分けている。蒼龍の部屋は和室である。 勧められるままに座布団に座った俺は、事前に何回もシミュレートした通り口を開いた。 「蒼龍、今回は本当によくやってくれた。感謝して――」 「もう提督、それはさっき聞きましたー。もちろん嬉しいですけど、私が欲しいのは『豪華なご褒美』ですよ」 「う…」 いきなり予定が狂ってしまった。仕方あるまい…いくらか段階をすっ飛ばすことにする。 「蒼龍…隣に座ってくれるか?」 「はい♪」 いかにも嬉しそうに、蒼龍が俺の隣に収まる。 それだけではなく、じいっとこちらを見続けている。正直気恥ずかしくてしょうがないのだが、目線を逸らすといろいろアウトな気がして外せない。 出所不明の義務感に突き動かされ、俺の腕は半ば無意識的に蒼龍の背中に回っていた。 「蒼龍」 「はい」 柔らかい。温かい。名を呼びながら抱きしめるだけで、こうも気持ちが昂るものなのか。 こいつが愛しくてしょうがない。 「よく…やってくれた。お前は最高の空母…いや、艦娘だよ」 「…はい」 「これからずっと、俺の秘書をやってくれるか」 「…! ず、ずっと、ですか?」 「そうだ。ずっとだ。…嫌か?」 「嫌じゃ、ない、です、けど…驚きました。提督はもっと奥手だと思っていたのですが」 しまった、すっ飛ばしすぎたか。 「でもそんな…土壇場で突っ走っちゃう提督も…好きです」 その言葉に心臓が跳ね上がりそうになる。ただでさえ人生最大速度で鼓動しているというのに。 改めて蒼龍を見つめる。 濡れた瞳。柔らかそうなほっぺ。龍の髭のような紐でしばった、幼い印象を際立たせる二つのお下げ。 今までさんざん見てきた顔のはずなのに、吸い込まれそうな錯覚に陥る。 いや、実際に吸い込まれていた。いつの間にか、俺は唇を重ねていた。 「あ…ん…んふ…ちゅ、ん…ああ…」 今までとは違う自分からするキスの、なんと甘美なことか。俺はひたすらに蒼龍の唇を、舌を、貪った。 ひとしきり堪能した後、ようやく口を離した。銀色の橋がぷちりと千切れる。 「…嬉しいです。キス、提督からしてくれたことなかったから」 「すまん」 「最初の時だって、私、ものすごく勇気を出してやったんですよ?」 「…すまん」 「でもやって良かったです。私がああでもしなきゃ、提督は私のこと、意識してくれませんでしたものね」 「…ああ。感謝してる」 「何言ってんですか。感謝してるのはこっちの方ですよ」 「え?」 「私…ずっと怖かったんです。正規空母の中じゃ弱いし、そのくせ燃費は正規空母並だし。 隼鷹や飛鷹なんか、私とほとんど艦載機数が変わらないのに、燃費はずっといいし。 飛龍は私よりずっと運がいいし…正直、客観的に見たら、あえて私を使う理由なんて殆ど無いんです… 提督の気まぐれで第一艦隊に、秘書にされたんだろうと。 どうせ私なんてすぐ外されてしまうだろうと。そう思ってました。 …なのに提督は、私を重用して下さいました。そればかりか、秘書に据えて、艦載機開発まで任せていただいて。 私はたまたま最初にホロ装備を出したってだけなのに。 いい装備が出るたびにびっくりするぐらい褒めてくださって… 嬉しかった…」 …そうか。あの喜びようにはそういう事情があったのか。 偶然だが、俺が艦載機担当に据えたことが他の空母たちに感じていた劣等感を和らげていたのか。 しかし…と、よせばいいのに思わずネタばらしをしてしまう。 「…それは、赤城さん以外に艦載機開発できるのがお前しかいなかったというだけで」 「でも、飛龍や瑞鶴たちがうちに来ても、提督は私を外しませんでしたよね?」 「そりゃまあ、そうだが…」 「どうしてですか?」 「…考えたこともなかった。お前を外すなんて選択肢、端から無かった…だけ…」 …うん?ということは、つまり、…そういうことなのだろうか? 「提督ったら、やっぱり自覚なかったんですね。ほんとうに可愛い人です。 とにかく、私だって提督に、とっても救われてたんですよ。そこが重要なんです。 おかげで、私は二航戦の誇りを保つことが出来ました。だから…大好きです」 再び心臓がドクンと跳ね、思わず蒼龍を抱きしめる腕に力が入る。 触れ合ってる場所が馬鹿みたいに熱く、頭の中も茹だっているのがわかる。 乱暴にはすまい、という理性の欠片を必死に保ち、彼女を抱きしめたまま囁く。 「…いいか?」 「私が誘ったんです。してくれなきゃ怒りますよ。あ…でも…明かりは消して欲しいです…」 立ち上がるのももどかしく、片腕で蒼龍を抱いたまま膝立ちで電灯の紐を引く。 部屋がふっと暗くなり、窓から差す埠頭の街灯だけが、お互いの輪郭を浮かび上がらせる。 「ん…他には…?」 「…なるべく、優しく…でも激しく…してください…」 目を伏せて、ぎりぎり聞き取れる声でおねだりする彼女は、たまらなく淫靡だった。 *** 「…触るよ」 「ん…」 布団に横たえた蒼龍に寄り添って、柔らかそうな胸に手を伸ばす。 名前通りの蒼い着物はしっかりとした布地だが、そこから伝わる感触は女性特有の柔らかさ。 今までは気にはなってもあえて目を向けまいとしていた、その中でも一番柔らかい場所に、俺は今触れている… そのことに得体の知れない充足感を覚えながら、俺は愛撫を始める。 「んっ …ふ…んんぅ…」 「蒼龍の胸、見せて」 「…あ…っ」 紐をゆるめ、着物を開き肌を露出させると双丘がこぼれ出る。 蒼龍の胸は大きめだが、戦艦娘たちのように形がしっかりしているわけではない。 おそらく服が比較的ゆったりしているのもあるだろうが、仰向けになった蒼龍の胸はやや潰れ、 いつも見るよりは小さい印象を受ける。 「…あ、あんまり見ないで、ひゃんっ…! あ…んん、ん…」 しかしその分、柔らかさは尋常ではない。 しっとりと汗を帯びた、まるで搗きたての餅のような乳肉を撫でるたび、蒼龍の口からは悩ましげな吐息が漏れる。 闇の中でふるふると震える乳首にむしゃぶりつきたい衝動をこらえつつ、 あえてそこを避けて優しくキスをし、舌を這わせて愛撫していく。 同時に袴の中に手を差し入れて、熱を帯びた大腿を撫でる。 「は…ぁ…! ん…」 触れる度に蒼龍の体はぴくりと反応するが、拒絶されているわけではなさそうだ。そのまま鼠径部や恥丘を下着の上から指を這わせ、蒼龍の劣情を煽っていく。 「うう…提督…っ」 「何だ…?」 「…っ 提督って…意外に意地悪なんですね…」 「そうか?」 「そうですよぉ…」 そろそろだろう。自分の指を舐めて濡らし、コリコリと尖った乳首に自分の唾液を塗りつける。 「ひぃんっ! は、て、いとくぅ、それビリって、んん、ん…っ!」 ヌルヌルになった乳首をそのまま指で転がし、軽く摘み上げる。 反対側の乳首は直接口付けし、舌で転がす。汗の塩気と、かすかに甘みを感じる… 「ん、んんっ…!は、ひゃんっ…はぁ、はぁ、あ、くぅん…」 「甘い…」 「な、何言って、! あ、そこ、は、ああっ…!」 ぐしょぐしょに濡れそぼった下着の上から、今度は肉豆と割れ目を強く指でなぞると 蒼龍は鋭い嬌声を漏らした。 「やあっ…提督、直、にぃっ…!」 精一杯のおねだりにこちらが我慢できなくなり、下着に手を突っ込み蒼龍の恥丘と性器全体を直接手のひらで覆う。 秘裂がちょうど中指にぴったりと当たり、ぬちゅりとした温かい感触を指の腹で撫でると、蒼龍の喘ぎ声がひときわ高くなる。 そのまま、しとど濡れた肉のスリットに指を潜り込ませて、膣内の浅い場所をクチュクチュと弄る。 「ひぃんっ…はぁっ、はあ、あっ、あ、あぁ、指、ぃぃ…っ、! そこ、ぞくってぇ…」 中指の根本がクリトリスを押しつぶすたびに蒼龍はビクビクと痙攣し、膣内の指を締め付ける。 いつの間にか蒼龍の腰は俺の指を誘い込むように艶かしく動き、手のひらと下着はべっとりと愛液で汚れている。 「…下、脱がすよ」 「やぁっ…」 「嫌?」 おそらく反射的に答えただけだろう。俺の問に目をぎゅっと瞑ったままふるふると首を振って応える蒼龍。可愛い。 完全に用を為さなくなった下着を丁寧に脱がすと、ついに蒼龍は一糸まとわぬ姿となった。 蒼龍の秘所を暴こうと、俺の腕が勝手に動き蒼龍の足を広げ、ソコを完全に曝け出す。 「や…やだぁ…そんな、見ないで…」 見るなと言われても目が離せない。暗さに慣れてきた目には、性器の周りにぽやぽやと生えた陰毛や、勃起しピンク色に光るクリトリス、ぷっくりと充血し開いた陰唇、その奥でヒクヒクと蠢く濡れた肉穴まではっきりと見て取れた。 発情し開花したソコは今まで見たどんなものよりも卑猥で、俺は思わず彼女の股間に顔を埋める。 「ひあっ…!?舐め…っ うぁっ…ふ、ふぅっ!ん、んぁっ、は、はぁんっ!」 汗と女の生々しい匂いがむわりと顔を包む。 そのまま舌を秘裂に沿ってなぞり、小陰唇の奥に隠された尿道口と膣口を丁寧に舐め上げる。 膣口に差し入れると愛液がじわりと滲み出て、膣腔内を吸い上げる度にずじゅじゅう、ぶぢゅるるうという下品な音が部屋に響く。淫らに発情した蒼龍の味と匂いを、俺は夢中で味わった。 「あ、いいんっ、音立てないでぇっ…! 舌、あ、たま、ふわふわって、私ぃ、はぁんっ…」 もちろん音はわざとである。 蒼龍の愛液を存分に堪能し、目の前で存在を主張している陰核に舌を這わせながら、膣内に指を差し込みかき混ぜた。 「蒼龍のここ、すごい大きくなってるぞ…」 「やあ…っ そん、な、こと… !!そ、れ、舐めちゃ、ひ、ひゃんっ… …はぁっ、はあ、あっ、あ、あぁ、指、ぃぃ…っ、! な、か、そこ、ぞくってぇ…」 どうやら膣内の性感帯を探り当てたようだ。ソコを指の腹でトントンと叩きながら、クリトリスを包皮ごと口に含み、思い切り吸い上げた。 「やぁ、はぁんっ、いっ…!? そ、こ…ああああぁぁっ…」 蒼龍は腰を浮かせながらブルブルと震わせ、数瞬後ドサリと布団に落下する。 指を引き抜くと、大量の愛液がゴポリと溢れでた。 「はぁ…はぁ…提督…すごいですよぉ…あっ、あむ…」 くたりと身体を弛緩させた蒼龍はたまらなく扇情的で、俺は思わず彼女の口にむしゃぶりついていた。 「むっ…んん…っ…ん、あ、ていと、んむぅっ…ちゅっ、ちゅうっ…」 舌を絡め合い、唾液を舐め取り、自らの唾液を蒼龍の口内に送り込む。 先ほどとは違う、犯すような、搾取するような激しいキス。 蒼龍の体液を摂取しているという事実にどうしようもなく興奮し、脳が熱暴走を起こしている。 「…ぷはっ! はぁっ、はぁっ、て、ていとくぅ、息できませんよぉ…」 「すまん…蒼龍があんまりにもエロ可愛くて」 「っ そ、そういうこと言うのやめてください…」 「蒼龍の口もアソコも美味しかった」 「ちょっ!だ、だからぁ…」 「次は、蒼龍がしてくれると嬉しいな」 「……!!」 調子に乗って言葉責めを重ねると、蒼龍は完全に固まってしまった。 …少し調子に乗り過ぎたかもしれない。引かれてしまったか…? だんだん不安と後悔が大きくなっていく俺の視界が突然回転し、蒼龍の顔がすぐ前に…否、上に位置する。 ちょうど俺が蒼龍に押し倒された格好で、どうやら体勢が逆転してしまったようだ。 「提督のご希望、よぉっくわかりました。そこまで仰るなら私も遠慮はしません。 今まで私が提督にしてあげたかったこと、存ッ分にやらせていただきますね…!」 鼻息荒く迫る蒼龍。あれ…?なんか俺、変なスイッチ入れちゃった…? 「はむぅっ!?…ん、んぅ…あ、あう、そう…むふぅ…!」 誠に残念ながら、これは俺の声。 そう、つい先程とは逆の構図。蒼龍が俺に覆いかぶさり口内を舌で蹂躙しているのである。 次々と蒼龍の唾液が送り込まれ、溺れそうになる俺。逃げようにも頭をがっちりホールドされてるので逃げられない。 限界に近いところでようやく口が解放された。 「ぷはっ、はっ、はっ、そ、蒼龍、お前…」 「やっぱり私の提督はとっても可愛いです ささ、楽にしてくださいね…♪」 丁寧にシャツを剥がされ、夜気に曝される俺の肌に蒼龍の熱い柔肌が直接重ねられる。 「ちゅ…れろ、ちゅ、ちゅぷ…ふふ…んちゅ、ぺろ…」 耳、頬、首筋。蒼龍がキスするたびにくすぐったいぞわりとした快感と、蒼龍の髪の匂いが鼻を撫でる。 次いで肩甲骨、喉、胸元にキスの雨と舌が這いまわり、乳首が弄ばれる。 「そ、蒼龍…」 「だぁめですよ、今は私がしてるんですから」 胸、鳩尾、臍、下腹部… 俺の肌の上をぬらぬらと這いまわる舌はだんだん下の方にずれていき、ズボンを脱がされ、屹立した下着のテントに到達する。 「はぁ…提督の、こんなに…んっ…ちゅ…ちゅ… 興奮してくれてるんですね…嬉しいです…ちゅ…はぁ…」 下着の上から先端にキスされるたび、布越しに唇の柔らかい感触が伝わる。 「んぅ…んふぅー…んっ、ん、ん…」 更に口に含まれ、舌で弄られている…らしい。下着越しにされているため確証が持てない。 何より、もどかしい。 「ふーっ…すぅー…はぁ…これが…提督の…」 おまけに匂いまで嗅がれているようだ。やばい。風呂に入ってきたとはいえ、こいつヤバイ。エロい。 そうこうするうちに下着まで脱がされ、限界まで勃起した肉槍が蒼龍の目前に曝される。 「…すごい…」 トロンとした目で俺のモノを見つめる蒼龍。恐る恐るといった動作でそれを手に取り、顔を近づけていく。 「んっ…すーっ、ちゅ…すごい、エッチな匂いと味…あっつい… ちゅ、れろぉーっ、にちゅ、はーっ、れりゅ、ちゅ、ちゅっ、はーっ、はーっ、んちゅううう…」 竿に舌を這わせ、根本から舐め上げ、先端や裏筋にキスの雨を降らせる蒼龍。トロンとした目で時折こちらを見遣るのが堪らない。 「ふふ…提督の、しょっぱくて先っぽからヌルヌルが出てますね…もっとしてあげますから、気持ち良くなってください…」 いかん。なぜ俺が恥ずかしいのだ。普通逆ではないのか。 いや…しかし俺もついさっき蒼龍に同じことを…蒼龍は同じことをしてくれているだけ… 「うわっ!?そ、蒼龍、そこは…」 「男の方も、ここは気持ちよくなれるって聞きましたよ?」 つ、つっと指先で撫でられる俺の菊門。やばい、こいつヤバイ。 それにこいつ今、「も」って言わなかったか!? 「でも初めてなのにちょっとやりすぎですよね…今回は撫でるだけにしておきますね♪ …ぁむうぅ」 「うぁあっ!?」 大混乱から立ち直る間もなく突然俺の陰茎が生暖かいものに包まれた。 先端を咥えられたままカリ首に舌が這いまわり、鈴口が刺激される。 「んっ、んぷ、んっ、んんん…ぷぁっ、はっ、んんっ、じゅじゅちゅうっ、はぁ… あむ、ぐぷっ、じゅぷあっ、はあっ、あむっ、んっ、んん、ううんっ♪」 くぐもった吐息と淫らな水音、陰茎への刺激、何より蕩けた顔で俺のモノを一心不乱に舐めしゃぶる蒼龍の表情が 劣情と射精欲を煽り立てる。 「ぷちゅぅ、ぐちゅ、くちゅっ、ちゅぷっ、あはぁ…はむぅ、ちゅろっ、ぢゅろっ、くちゅる、ぢゅうううっ…」 「お…いっ、そう、りゅう、ダメ…だっ…!」 「んー…?ひもひよふにゃいれふか?」 馬鹿、シながら喋るな変な刺激がっ…! 「ちがっ…よすぎて、出ちまう…っ」 「んふー♪ …ちゅる、じゅ、ふぁ、ん、んぶぅ、ちゅぷ、ちゅっ……ぢゅるるるるっ!」 むしろ一層情熱的にフェラチオを再開する蒼龍。その嬉しそうな顔を見た瞬間、ついに我慢が決壊する。 びゅ、びゅぶぅっ!どぐっ、どぐっ…どぷっ… 「んぷっ!?ん、ん~っ ぷはっ、こほっ、うわ、わっ…」 たまらず蒼龍が吐き出した精液が俺の下腹部にぼたぼたと垂れ、 それでも収まらない射精が蒼龍の顔を白濁液で汚していく。 「これが…提督の精子…なんですね… …ふふ、エッチな味と匂い」 「す、すまん、口の中で…うわっ!?」 じゅずずぅ、ぴちゃ、ちゅぱっ… なんと蒼龍は俺の腹に落ちた精液を舐め取り始めたのだ。 馬鹿、やめとけという言葉も聞かず夢中で俺の子種を啜るその姿はどうしようもなくエロくて、 俺の制止の声はだんだんと掠れて消えてしまっていた。 ちゅぷん、と萎えてしまった俺の陰茎に残った精液まで吸い出して、蒼龍はニカッと笑う。 「ごちそうさまっ♪」 「お、お前…お前…」 得意げな顔で俺の胸に抱きつく蒼龍。 「馬鹿だな、飲まなくていいのに」 「違いますよ、私が飲みたかったんです。…そりゃ、味はあんまり良くなかったですけど。 私で気持ちよくなってくれた、好きな人の精子なんですから。飲んであげたいに決まってます。 それに、提督の精子ですよ?…興奮するじゃないですか」 「…お前がそんなにエロいとは知らなかったよ」 「なーに言ってんですか提督。提督だって私のを飲んだじゃないですか。エロいのはお互い様です。 お、おまけに…美味しかった、だなんて…」 「う…あ、あれは…」 思い出させるな顔から火が出る。 しかし言われてみればその通りである。その通りであるが、ちょっと想像と違ったというか、 艦娘はもう少しお淑やかであって欲しかったというか… 「というか、いやに手慣れてないか?本当に初めてなのか?」 「あのですね提督…私達の生活、ご存知ですよね? 今までそんなコトする暇なんてありませんでしたし、第一相手がいませんよ」 「いやまあ、確かにそうなんだが…あんなことの知識はどこから…」 「秘密です。でも、私がやったことぐらいの知識はだいたいみんな知ってますよ? 駆逐艦の子たちでも知ってる娘がいるくらいですから」 「…オゥ…」 なんということだ。我が鎮守府がそんな事態になっていたとは…恐ろしい。 「そういう提督こそ、なんか手際良かったですよね… 女っ気の全くない生活をしてらっしゃいますが…実は女性経験が結構お有りで?」 「き、企業秘密だ」 「ほらぁー」 ご想像にお任せします。 「…私達だって、女の子ですから。そういうことに興味はあります。 私も提督にアプローチした時から、いつかこんな時が来るかなって…考えたり、れ、練習したり…」 バカヤロウ、何突然エロ可愛らしいこと言ってんだ。おかげで元気になっちまったじゃねえか。 「あ…提督の…」 蒼龍も気づいたらしい。改めて蒼龍を組み敷いて抱きしめながら、耳元で囁く。 「…挿れるぞ」 「はい…私でいっぱい、気持ちよくなってくださいね…」 そそり立つ怒張をあてがい、ゆっくり、ゆっくりと腰を進める。 「っ」 ペニスが、蒼龍の充血した小陰唇を掻き分け― 「っう、ううっ…」 膣口をこじ開け― 「くうっ…あ、ああっ…」 処女膜を引き裂き― 「あ…あ…っは、はうっ!はっ、はっ、あ…」 遂に最奥に到達した… 「ぜん、ぶ、入りましたか…?」 「ああ…大丈夫か…?」 「は、はい…痛いけど…痛いのも…嬉しいです…」 クソッ、どんだけ可愛いんだこいつは。 「提督…このまま、ぎゅっとしてください… …あと、キスもしてください…」 言われなくても。 存分にお互いの唾液を交換し合ったあと、頃合いを見計らいゆっくりと腰を動かし始める。 「っ!」 「だ、大丈夫か?」 「はい…ちょっと痛いけど…平気…動いてください… 私、は、提督と繋がってるだけで…っ、あっあ、んんっ…」 いちいち興奮させるようなことを言うな。加減できなくなる。 ピストン運動は控え、ゆっくりと円を描くように腰を動かす。 それだけで蒼龍の膣内はきゅうきゅうと締め付け、信じられないほどの快感をもたらす。 「はぁ、はぁっ、提督、提督ぅ…」 「蒼龍、好きだっ、蒼龍っ…」 互いの名を呼ぶたびに嬉しさと快感がこみ上げてくる。 それは蒼龍も同じなようで、彼女の腰の動きもだんだんと大胆になっていく。 結合部から出るずちゅ、ぶちゅという卑猥な水音が脳髄を刺激し、蒼龍の息遣いと熱気が頭を熱く甘く蕩かしていく。 「はぁっ、あ、! あっ、てい、とく、ああっ、やだやだ…っ、そ、こぉ、だぁめっ…!」 たゆんたゆんと揺れている柔らかい乳肉を掴むと、蒼龍の嬌声が一段と激しくなる。 そんな蒼龍がたまらなく愛しくて、腰を動かしたまま覆いかぶさって唇を貪った。 「ちゅむぅ、ちゅぶっ、ちゅる、んっ、ぷぁっ、んんっ、あはぁっ きも、ちいい、ですかっ…?て、とくっ、あ、わ、わたしできもち、よく、なれてるっ…?」 「ああっ、最高だっ…蒼龍のナカ、熱くて、ぬるぬるでっ…搾り取られそうだっ…!」 「よかっ…た、わた、しも、はぁっ、ていとくのぉ、いいっ…きもち、いいですっ…」 前戯でさんざん濡らしたのが良かったのか、蒼龍はほとんどもう痛がる素振りを見せない。 それとも蒼龍のしていた『練習』の成果だろうか? 「ちゅ、ぺろ、はぁ、すっ…き、な、人の、だからぁっ …きもちいい、の、かなっ…」 そんな詮無い思考も蒼龍の台詞で塗りつぶされ、彼女の胎内にすべてを注ぎ込むことしか考えられなくなってゆく。 「う、うあっ…も、だめだっ…蒼龍…っ」 「はいっ、はいっ、わたしの、なかでぇっ…ぜんっ、ぶっ…わたしもっ…!」 どくんっ、どびゅうっ、びゅるる、びくっ、びくっ… 限界まで抑えていた欲望が爆発し、蒼龍の最奥に流れこむ。 同時に蒼龍の膣肉もまるで絞りだすようにうねり、痙攣し、貪欲に子種を飲み込んでいく。 「っあ…あ…あつい、の、どくどく、って、出てます…」 人生最高の充足感を味わいながら、蒼龍の肚に一滴残らず注ぎ込んだ。 そのまま倒れるように蒼龍に覆いかぶさり、心地良い倦怠感を共有する… 「はぁっ、はぁっ、気持よかったよ、蒼龍…」 「私も、です…私…幸せです…」 この期に及んでまだそんな可愛いことを言うか。俺を殺す気か。 互いの体温をひとしきり楽しんで、ようやく蒼龍から離れる。 萎えた陰茎を蒼龍の膣穴から引き抜くと、愛液と精液の混ざったものがゴポリと溢れ出る。 「いっぱい出ましたね…」 二回目だというのに、我ながらよくこんなに出したものだ。 「…っとと、ティッシュティッシュ」 「ああいいんです、後で私が片付けますから。それに―」 「え?」 「いえ…何でもないです…あの…ちょっと勿体無いなって思っただけです…思っただけですよ?」 この子は… 「…で、大丈夫だったか?最後の方は俺も気遣いとかできなかった、すまん」 「いえ…最初は痛かったですけど…途中からわけわかんなくなってましたし… 多分、気持よかった…ですし…夢中になってくれたのなら、嬉しい…です」 そう言葉を紡ぐ蒼龍がまた可愛くて、たまらず俺は彼女を抱きしめる。 「…これからも、よろしくな」 「はい…こちらこそ♪」 蒼龍が眠りについたあと、このまま蒼龍を抱いて眠りたい衝動をこらえ、俺は空母寮を後にしたのだった。 *** 「エエー!まだ付き合ってなかったんですカー!?」 「…え?」 翌日、朝食の席で蒼龍を改めて秘書に据えることを皆に伝えた。 最初は「提督は何当然のことを言っているのだろう」という雰囲気だったので、もうちょっとその…詳しく説明したらこの反応である。 「…え、どういうこと?」 「だってテイトク、蒼龍と一緒にいるトキはいつもso sweetなatmosphereじゃないですカ!」 「…マジで?」 ちなみに金剛は砲・電探の開発を担当しているため、何回か臨時に秘書艦を務めている。 自分としては蒼龍と変わらぬ態度で接していたつもりだったのだが… 「ワタシもテイトクのことダイスキですケド、さすがに蒼龍には敵わないネー」 「蒼龍さんもラブラブでしたし、どう見ても余人の入る隙はありませんでしたからね…」 「アレで隠していたつもりだったとは…提督は余程隠し事をするのが下手と見えるの」 鳥海と利根に追撃を食らい、茫然とする俺。ということは… 「な?昨日は早々に引き上げて正解だったじゃろ?」 「ですね」 「Nice ideaだったネ」 「え!?お姉さま、あれってそういうことだったんですか!?」 やはり、昨日は気を利かせてくれていたのか。若干一名気づいていなかったようだが… 「提督と蒼龍さんが、そ、そんな関係だったなんて…」 「あー…やっぱりそうだったんだね」 「お、朧は知ってたの!?」 「まあ…ちょっと怪しいかなぁって」 「うーん、ご主人様呼びも考えないといけないかなぁ?」 「フン、クソ提督にはもったいないわね」 第七駆逐隊の面々ですらこの反応…そんなに態度に出ていたのか… 今度からはもう少し気をつけよう、あれ?でももうその必要もないのか? そんなことを考えていると、 「ああ…それで昨日は特に声が大きかったのね」 「!?」 別な方向からの衝撃発言。今度は蒼龍が動揺する番である。 「ちょっと飛龍…はしたないですよ」 「ご、ごめんなさい、赤城さん」 飛龍は蒼龍の隣の部屋だ。もちろん昨日が初めてで、つまり… 当然ながらそんなことは口にしないが、顔を真赤にして俯く蒼龍はすこぶる可愛かった。次回の責めネタは決まりだな。 そんなことを考えながら、俺は朝食と幸せを噛みしめているのだった。 おしまい
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/279.html
前回の話 ――提督―― 「提督、まだかかりそうですか?」 「執務は一旦やめた」 「……何見てるんですか」 「家具のカタログ」 「仕事してください」 「家具がなければ戦はできぬと言うだろう」 「言いませんよ」 「ところでこいつを見てくれ、これなんか寒い執務室にはよくないか」 「聞いてください」 大井は呆れた様子をそのままにこちらまで寄ってきて、自分の手にある冊子を覗き込んできた。 なんだかんだ言ってこっちの駄々にも大分付き合うようになったな。 「……『早く出しすぎた炬燵』?」 「ああ」 販売が始まった時期が時期なので商品名は分かるが、今やもう年末だ。 にも関わらず商品名が変わらないところは是非ともツッコミを入れたい。 大井はフローリング一面の執務室の中、 部屋の隅で四角く区切られている石の床、正確にはそこに鎮座する家具に目をやった。 「……あのダルマストーブは?」 「あれは置物だ」 見た目は風情があっていい。 亜炭や薪を使うストーブは空間を暖める性能としても抜群だが、炬燵に入って温もりを得るのもそれに劣らない。 しかし、コンセントにプラグを刺すだけの家電である炬燵と利便性で見比べてしまうと、言うまでもなく炬燵に軍配が上がるのだ。 大井としても暖を得られるのだから反対する理由はあるまい。 暇そうにカタログをぼんやりと眺める大井を尻目に、早速備え付けの電話機で炬燵と床の貼り替えを頼んだ。 …………………… ………… …… あれから数日が経ち、朝になって寄越してきた家具屋の連絡では、これから執務室を数時間占拠するという。 上も必ず遂行しなければならない任務はそんなに寄越してこないので……。 「本日、艦隊の出撃、演習、遠征は無しとする。繰り返す。……」 目の前のマイクに機械的に喋りかける。 「総員、休むなり自由にするといい。以上」 そう締め括り、内線を切断した。 アナウンスしている間も大井は秘書らしく自分より一歩下がったところでじっとしていた。 時刻はほぼマルキュウマルマル。 執務室が数時間使えなくなるのでは執務する気が起きないので、このような判断を取った。 ちなみに機密書類等は全て資料室に移して施錠してあるので問題ない。 しかし連絡は当日の朝ではなく前日に欲しかった。 普段通りに起床して軍服に着替えるなどの身支度が無駄になってしまったではないか。 事前に分かっていれば今日は昼前まで寝ていたというのに。 「ダメです。早起きは三文の得ですよ」 そして釘を刺すこの真面目系部下。 軽い気持ちで寝過ごしたかったとぼやいただけで少し目元をキツくさせている。 まあ心配するな。一度目が覚めた後ではもう寝る気は起きない。 今となっては、その諺にも賛同できる理由があるからだ。 「一緒に出かけないか」 予想だにしなかったというように二つほど瞬きをしてから口を開く。 「……私と、ですか?」 「そうだ」 せっかくの休日だし、起きたなら起きたで有意義に過ごさないとな。 どちらかといえば出不精の自分がこうして人を外出に誘うのは、自分で言うのもなんだが珍しいことだ。 「…………」 大井は黙りこくった。 何か迷っていることでもあるのだろうか。 それにしても、考えに耽って口許に手を小さく添える大井の姿からは 可愛らしさと淑やかさの二つを感じ、これを見ているだけでも大分頬が綻ぶ。 しかしこちらに目を合わせにっこり笑って踊るように出した答えは、弾みかけていた自分の心を絶望のどん底に叩き落としたのだ。 「嫌です」 「えっ……?」 漫画等ならばこれくらい明るい調子の台詞の語尾に音符の記号が添えられているのだろう。いや普段読まない漫画の話はどうでもいい。 何故拒絶する? 他に外せない用事があるなら仕方がない。 しかし嫌などと言われる理由が分からない。 私と出かけるのがそんなに嫌か? もう愛想を尽かされたのか? 何故。 頭で考えを巡らせても心当たりがない。疑問符が解消されずに残る。 心臓がきゅっと締め付けられるような感覚を覚えた。手が痺れるような感覚を覚えた。 開いた唇が塞がらない。返す言葉が浮かばない。 「……嘘ですよ」 「え」 先よりも力のない声が出た。 ……嘘? 「……あ、あぁ……、嘘ね……、洒落にならんなぁ……」 そもそも嫌いだと言われたわけでもないのに苦しくなった胸に手を当てて落ち着かせる。 はは、と軽く笑って誤魔化そうとしたが渇いた声にしかならなかった。 大井は後悔した念を少し顔に浮かべてから静かに抱きついてきた。 「……ごめんなさい。少しおいたが過ぎました」 「ああ、全くだよ……で、付き合ってくれるのかな」 「……はい」 抱きつくのをやめて一歩下がり、今一度顔を合わせて幾分か明るく答えてくれた。 短い返事だが、これを聞くだけでも気分は大分持ち直した。 「よし、じゃあ私服に着替えよう。お前も好きに着替えてくるといい」 「そうしますね」 へそが見える裾の短い普段の装甲は嫌だろう。まして今は冬の真っ只中だ。 無論あれは自分の趣味じゃない。感想としては悪くないが……ってそんなことはどうでもいいな。 こんな時まで軽く礼をしてから執務室扉を閉める大井を苦笑して見送った。 それから、いざという時のために職場に持ち込んだ幾つかの私服を選ぶために、寝室に戻ることにした。 …………………… ………… …… ――大井―― 絶対に音を立てないよう、閉めた扉に背を預けてしゃがみ込む。 やってしまった。 近頃よく素の表情を見せてくれる提督が面白く、たまにこうして意地悪をする。 提督も本気で嫌がっている様子を見せなかったのでさっきもやってみたが、実行したあとで後悔した。 提督の反応がいつもと明らかに違ったからだ。 嘘と言えども言っていいこととそうでないことがある。 軽巡の軽は軽率の軽ではない。まず今の私は軽巡ではないけれど、軽い気持ちで提督を悲しませてしまった。 提督のあの、全てを失ったような、生気を失ったような顔は見ている私まで苦しくなってくる。 しかしいつまでも後悔している場合ではない。 提督から誘ってくれたのだから、くよくよしてないで精一杯応えてあげないといけない。 何より私も楽しみたい。 そっと立ち上がって自分の部屋へ歩き始めたが、数歩で懸念事項に思い当たる。 「私服、あったかしら……?」 …………………… ………… …… 結論から言うとなかった。 自分の部屋を漁っても出てきたのは、軽巡だった頃に使っていた緑を基調とした服。 そして今使っているクリーム色と深緑の、何故か裾が短い服。 その二種類が三着ずつ出てきただけ。 いずれも支給品だ。私服なんてものはなかった。 思えば編成に入らない休みのときに北上さんと行動を共にするときも、特に着替えるようなことはしていなかった。 「どうしよう……」 急に私服と言われても出てこないので、この二種類から選ぶしかない。 へそ出しの比較的派手な方も嫌いではないが、へそを出して街を歩く一般人はまずいないだろう。 別にこのようなファッションを広めたいわけでもないのに流行の最先端に立ちたくはない。 何より、恐らく目立たなくするために提督は私服に着替えると言ったのだ。 艦娘もあまり目立っていいものではないだろう。 このような幾つもの理由を踏まえて、私は地味な方に再び袖を通した。スカートも黒と見間違える深緑の物に履き替える。 クリーム色の服と違い、裾は並にある代わりに袖が短い仕様のこれを着るのは何ヶ月ぶりだろう。 この部屋を使う私も北上さんもお洒落に気を遣うタイプではないので、姿見という贅沢なものはない。 でも今までそんなものなしでやってきて、提督からも身だしなみで指摘されるようなことはなかったからきっと大丈夫。 部屋の隅に置いてある艤装をちらと見やってから、処女航海の時と似たような緊張混じりの高揚感を胸に部屋を出た。 廊下を歩くと、何人か同僚とすれ違う。 あまり話をしない人は好奇の目を私に向けるだけだが、それなりに関わる機会が多い相手の場合その限りではない。 「……あら?」 私と同じく第一艦隊に所属する、空母赤城さんが足を止めた。 ついさっきのアナウンスが流れるまでに出撃準備を整えていたのか、弓など空母に必要な艤装を携えている。 「大井さん……よね? 前からいる……」 ……ああ、そうか。 一瞬何を言っているのか理解が及ばなかったが、建造等で被った別の私ではないかと迷ったのだろう。 私の格好が以前のものだし、容姿は別個体も一切の違いがないので見分けがつかなくても仕方がない。 「そうですよ」 この人はお喋りが好きというか好奇心が旺盛というか、お姉さんなのに子供のような人だ。 それが赤城さんという人の魅力であり個性だ。無論悪い意味ではない。 だから服装が変わっただけの私に声をかけてきたのだろう。 「今日は出撃ないのよね? 何かあったの?」 そういえばそれについての詳細までは、提督はアナウンスしていない。 しかし提督のやり方に異論はなかったから、あの時も後ろで見ているだけで何も言わなかった。 告知とは重要な情報だけを確実に伝えることが大切だからだ。 私は、さして重要ではない詳細の旨を赤城さんに伝えた。 最初少し真剣だった赤城さんの顔が苦笑に崩れた。 「執務室の改装……って、完全に私情ね」 「そうでしょう?」 「でも大井さんは良かったんじゃないの? 炬燵が使えて」 「執務室以外にも暖房はあるじゃないですか」 「まぁねぇ……。ところで、何故今になってその服を?」 あーやっぱりそれ聞かれちゃうんですか。 というか最初からそれを聞くつもりでいたのかも。 「……気分転換ですよ」 「ふーん……?」 気恥ずかしさを隠し、極めて冷静に返したが赤城さんは納得してはくれなかった。 少し背丈の低い私に合わせて屈み、じっと顔を見つめてくる。 こんなことが前にもあったような気がする。 その時の教訓を胸に、私は目を逸らさずに見つめ返した。 光らせるような真剣な目をする赤城さんは一体何を考えているんだろう。 「……デート」 「!?」 私は勘のいい占い師に秘密を当てられたような驚愕をした。 相方の加賀さんはイメージ通りの鋭い人だが、この人も大概だったらしい。 普段と違うところは服装だけのはずが、そうピシャリと当てられては……。 「……僅かだけど、いつもよりお化粧に気合が入ってるわね」 本格的に占いじみてきた。 銀座のママに倣って横須賀のママとでも名乗ってはどうだろう。 確かに今日の化粧にかけた時間はいつもより二割増しだ。 無意識に私の片足が後ずさった。 赤城さんはニヤッとした笑みを浮かべ、さながら核心を突き止めた探偵のように顎に手を添える。 「まず大井さんってもう提督と付き合――」 「失礼しましたっ!!」 勢いに任せて頭を下げ、赤城さんの横を通り過ぎる形でその場から逃走を図った。 別に追いかけてくるわけでもないのに私の足は小走りをやめようとしない。 心臓がバクバクする。 ああもう。 ただ外出するだけで、面倒臭い。 「……赤城さん? どうしたの、そんなところで」 「あ、加賀さん、あのね……」 …………………… ………… …… ――提督―― ノックされた扉に返事をやり、姿を現した大井の姿を見て驚愕した。 大井の格好は昔懐かしい軽巡の頃のそれではないか。 「……お前、私服持ってないのか?」 「必要だと思わなかったので」 なんということだ。 これくらいの年――実年齢は知らないが――の少女、見なりを気にするはずなのに、大井の姿からその様子は伺えない。 ひたすらに艦娘として練度を高めるため来る日も来る日も演習や出撃をさせていたが、愛の注ぎ方を自分は間違えていたのかもしれない。 洒落する暇を作ってやれなかったことを反省しよう。 任務を減らすのではない。自分が手伝ってやればいいのだ。 財布を取り出して中身を確認し、閉じる。 「……ようし。ならばまずお前の私服を買ってやろう」 「えっ」 「この辺は偶に出歩いているから私に任せろ!」 高揚してきた気分が自分に胸を張らせた。 今日は鎮守府の提督ではないから羽目を外しても何ら問題はない。 「ちょっ提督、私は要るとは」 「まあ一着くらい いいじゃないか。私の我が儘も偶には聞いてくれよ」 「要らないって言ってるんですが」 「金は私が持つし、選ぶのも私だ。大井は何も心配いらない」 「……提督が選ぶんですかあ? センスないもの選ばないで下さいね」 なんだかんだ言って買うなとは言ってこないんだな。 自分だって並みにセンスはあるのだ。ないとは言わせてやらない。 大井の不安がる様子を表した、冬の倉庫で無造作に積まれているボーキサイトのように冷ややかな眼差しも、 普段以上の調子の良さをもって凪いだ。 とにかく、顔も痛くなるほど冷たい風が吹く今の季節に半袖は頂けない。 いつも臍だしの服で出撃させているじゃないかというツッコミは控えてくれ。 あの格好は工廠がさせているのだ。 一言添えてから寝室に戻り、予備の上着を持ち出す。 上着は自分が着ているのと合わせて二着しかないが、黒にブラウンと、どちらも落ち着いた色なので問題はない。 「外は寒いからこれを着なさい」 「……提督の服は地味な物ばかりね」 地味と言うな。 四六時中真っ白な軍服を着ていると嫌でも明るい物を避けるようになるのだ。 背中から上着を羽織らせてやると、肩幅は自分のほうが広いのが改めて認識できる。 肩パッドでも入れたほうがよさげな程度には上着の大きさが合っていない。 手が半分ほどしか出ていない長い袖を見つめる大井にボタンを留めさせる。 サイズは合わなくても寒さは凌げるだろう。膝まで隠すほど長い裾は好都合だ。 自分よりも体温の低い大井の小さな手を引いて共に執務室を後にしていく。 「あっ……、もう……」 「何か言ったかー?」 「なんでもありませんっ」 …………………… ………… …… 艦娘一人だけを私服姿の提督が連れ出す光景はさぞ珍しかっただろう。 明らかに狼狽えていた門番に軽く渇を入れ、家具屋が来たら通すように伝えてから鎮守府を離れていく。 まあこんな形で出かけるのも初めてだから驚くのも無理はないかもしれない。 敷地内での他の艦娘からの視線さえも多かったからな。 歩幅の大きくない大井に合わせて歩きつつ、両手を擦り合わせる。 両手で皿を作り、歯は閉じたまま、しーと息を吸い、はーと皿に吐息を当てる。 それでも暖は得られない。防寒用の手袋は持っていなかったからついでに買っておこうか。 不意に皿の片手に白い手が重ねられた。きゅ、と握られ自分の手が下ろされる。 横を見てみると、前方を向いて目を合わせようとしない一見平然とした大井。 「…………」 だがな大井、私には分かるぞ。緊張を隠そうとしていることくらいな。 そんなにぱちぱち瞬きが必要なほど大気は乾燥していないだろ。 それから平静時よりも顔の血色が良くなっていないか。 しかし自分も何も言わず、歪みそうになる顔の筋肉を引き締め前方を向く。 繋いでいない方の手は上着のポケットに突っ込んだが、繋いでいる手は寒気に晒したまま。 それでも振り払って同じくポケットに突っ込むという考えは起きない。 そのまま足を進め、公道に合流した。 肌を刺すようなこの空気でも人は抗って街を行き交う。 昔から港町の一つとして発展してきた横須賀から人が消えることはなく、むしろ年末ということで普段よりも人通りが多い。 明らかに娯楽目的で出歩いていると見受けられる人達だっている。 特に分かりやすいのは、自分らと同じく手を繋いで楽しげに談笑する成人した男女や家族連れ等だ。 こちらは談笑はしていないが、ちょうど良いので話を振ってみる。 「私達も、夫婦に見えてんのかね」 「……何言ってるんですか。夫婦と見るには年が離れてますよ」 「なら兄妹か親子かな?」 「顔が似てないと思いますが」 「……まあ、恋仲だろうね」 「…………」 異論の消えた大井は何も言わない。 にぎ、と繋いでいる大井の手に力が幾分か送られたのが分かる。 人通りが激しくなってきた。 「……ぶつかるといけないから、もっと寄りなさい」 「変なことしたら帰ってから撃ちますよ」 「ほう? 変なこととは具体的に何なのかな?」 「今してるそれもセク質と言って立派な犯罪なんですよ」 「しょうがない。帰ってからにするよ」 「撃っていいですか?」 「駄目」 一寸劇終えたところで言う通り、肩が触れそうになるまでに寄ってきた。 再び静寂が自分らを包む。しかし街の喧騒が聞こえなくなる感覚が離れることはない。 大型複合店に入るまで繋いだ手を通じて人肌を感じ合った。 …………………… ………… …… 「おお……」 「うわぁ……、すごい……」 荷物を提げて帰投してまず執務室の扉を開けると、玄関のように靴を脱いで上がるつくりになっていた。 靴を脱いで上がるそこは注文通りの畳。やはり実際に目の当たりにすると感嘆の声が出る。 ダルマストーブは位置を変えずに靴脱ぎ場にちゃんと残っているし、そして炬燵も完備だ。 炬燵を退かせれば茶道もできてしまうだろう。和のかほりが強まったここでは時どころか執務も忘れそうだ。 「荷物置いてきたらおいで」 「でも私、北上さんと……」 なんということだ。断られてしまった。 でも今日は執務は休みだし、北上は親友だから仕方が無い。大井は自分だけのものではないから。 偶には一人寂しく本でも読んで、雑魚寝で夢の世界に身を投じるさ。 「そうか……」 「はい」 「…………」 「…………」 「…………」 「……ああもうっ」 不意に声を荒げられた。 素っ気ない顔から力が抜けたように見える。やれやれとでも言いたげか。 「北上さんも連れてきていいなら、来てあげます」 その言葉が聞きたかった。自分の気分は高騰し、顔が綻んだ。 ぐっと握り拳を作る。口調が逸る。 「いいよ! 全然構わないよ!」 「……子供ですか」 「私はいつでも子供だよ」 気分の折れ線グラフは垂直上がりだ。 疲れたような大井の反応にも、テレビでそこそこ前に聞いた自動車のコマーシャルのフレーズを改変して声を低く作り、ビシッと言ってやった。 ……決まった。 私のセンスの良さと共に、低燃費の良さも分からないとは言わせない。 いや、それが流れていた頃はまず艦娘なんてものはなかったか。 「…………」 「……失礼します」 軽く引いてないで何か言ってくれよ。 こんなギャグをかまされても軽く頭を下げてから出て行くところは感心するけど。 おい。 …………………… ………… …… 「提督ーお茶飲みたいよ」 「よし待ってな」 和室とまではいかないにしても畳部屋の素晴らしさに感化された自分は、久しぶりにダルマストーブを稼働させた。 おかげで炬燵の中だけでなく部屋全体が暖かい。 突然の北上の要求に応じてやろうと炬燵を抜けようとすると、大井に制止される。 「私が淹れるわ」 「お前はいつもやってるだろ」 それに偶にはこちらから振舞ってやりたいのもある。 まともな教育を受けている奴に、いい年して茶を淹れられない奴はいないから心配はない。 というか、できなかったら人に茶の淹れ方など教えることはできない。 「そうだよー、それに提督のお茶飲んでみたいじゃん」 「でも……」 「いいから。大井は座ってろ」 二人がかりで不満げな大井を座らせた。 秘書艦としての使命でもあるのか? しかし今日の自分は何一つ提督らしいことはしていない。提督でもなんでもないただの一人の男でしかない。 軍服を着ていない男が提督であるはずがない。 だから一日くらい気負いしなくてもいいのだ。 おっと、何の肩書きもない者が軍施設に出入りはできないというツッコミはなしだ。 大井が北上に茶を振舞いたかった可能性は、やかんを調達しに行こうと執務室の扉を閉めたところで思いついた。 もう遅い。 昼時を過ぎたので間宮は暇そうにがらがらの食堂を掃除していたが、彼女も今日くらい休むべきだ。 厨房から借りて水を張ったやかんを、焜炉を使わずに執務室に持ち出しあえてストーブに乗せて沸かす。 ついでに火室の中を覗き、脇に積んである亜炭をシャベルで放り込む。 二十一世紀になって本格的にこの光景が珍しくなってきたのかと哀愁を誘う。 湯ができるまでの間に、談笑に花を咲かせている二人に混ぜてもらおうと、 急須と湯呑みと茶葉の缶を乗せたお盆を畳に置いてから上がり込む。 ふうと一息ついて座椅子に胡坐で座り、上から炬燵の布団をかける。 すると談笑が中断された。 「提督~……」 北上は何故か苦笑した様子で、文句の一つでも出てきそうな声を投げ掛ける。 器用だなお前。 「お湯が沸くまではお茶は我慢してくれよ」 「いやそうじゃないよ」 北上はじとっとした攻めるような目を向けてくる。 「大井っちが惚気ばっかり聞かせてきてさあ」 「え?」 「北上さん!? 私が言ったのは愚痴で――」 何故そこで大井が慌てるのか。 惚気って。大井は一体何を言ったのか。 「えぇー? とりあえず提督が子供っぽいのは分かったからって感じ……。面白いんだけどさ」 本当に何を喋ったんだ大井よ……。 この鎮守府で築き上げてきた自分のキャラが崩れるようなことはあんまり言わないでくれるとありがたい。 多くの部下を束ねるような立場に就く以上、ある程度の威厳やら何やらを身に纏わなければならないわけで……。 それにしても最近は大井が北上に一杯食わせられる光景をよく見るものだな。 「ああ、うん。すまんな。子供っぽくて」 「そうじゃないってば。提督わざとやってない?」 「クク、わざとだよ」 このやり取りが面白くて、アクのある笑い声が混ざった。 やっぱり大井も北上も癖があって面白い奴だよ。 「……気持ち悪いですよ」 左から毒が飛んできた。眉の下がった大井の弾丸のような目が冷たく刺さる。 しかし、今朝の出来事のように拒絶反応をされるのには弱いが、 毒に関しては何度も叩かれた熱い鉄のように耐性がついているので怯まない。 むしろ柔軟な発想を要する作戦指揮官としては、それすらも逆手に取ってやるのだ。 「気持ち悪いだって……。北上慰めてくれえっ」 勿論このべそかきは演技である。 右の子に向かって両手を広げて抱擁を求めようとする。 あくまでも求めるだけでこちらからいきなり抱き着きに行くような真似はしない。 「しょうがないなーおいでー」 うむ。ノリのいい子は好きだぞ。 北上から許可をもらえば、大井に強気に出る隙を与えることなく北上に抱き着ける。 いや、これで合法的に北上に抱き着けるとかそういうことではなく、これも作戦の内なのだ。 本当だって。 「ううっ」 「おーよしよし」 北上はこちらの考えている内が読めているのか? こちらは抱擁に力や感情までは込めていないのだが、北上が頭まで撫でてくれるとは予想していなかったぞ。 とにかくこうして大井の出方を見る! ……北上の頭がすぐ横にあるので、この体勢では大井の様子は伺えなかった。 「提督、私を悪者にして楽しいですか」 ……大井は冷静だった。ゴルゴばりに冷静だった。 面白くないので次の作戦を即興で考えた。 北上から離れて立ち上がって大井の席へ歩いていく。 そして大井の背後を陣取ってしゃがみこむ。……これもデジャヴだな。 がばっと逃がさぬようそれなりの力で抱きしめた。 「ッ!」 「んー」 大井の体の温もりを感じて癒される。 鼻が後髪にくすぐられる。さらさらでいい匂いがするものだ。 しかし大井は、抵抗しようとしない。 「提督『も』、愛してます」 そこで、大井が普段言う台詞を意味を少し変えて使ってみる。 しかしやはりというか、抵抗する素振りさえ見せない。 それどころか腕に頭を預けてきた。 「提督なんか愛してません」 なんだそりゃ。 それが本心なら抵抗したらどうなんだ。 いや、本当は分かっている。言葉は本心だけを無造作に吐き出すだけのものではないからな。 ちらと北上に目をやるとムッとしたような表情をしていた。 北上のその顔は初めて見るな。 北上を弄ろうとしてこんなことをしたんじゃないんだがな。 まあ目の前で男女が仲睦まじくされたら誰だってこうなるか。 ピー!! ストーブに乗っかったやかんが、北上の心の内を代弁するように勢いよく湯気を吹いた。 やれやれ。時間が経つのは早いな。 北上もいることだし、また今度にしてやろう。 一つ溜息をついて立ち上がり、茶の準備をする。 まず急須と湯呑みに湯を注いでそれぞれ温めるところから始める。 短時間で建水という器に湯を捨てる。 急須に茶葉を入れ、湯を注いで短時間待つ。 三つの湯呑みに均等に茶を一滴残さず注ぎ切って、炬燵の上に置いていく。 「どうぞ」 最後に自分の湯呑みを持ち、息を吹きつつ恐る恐る口にする。 茶の適温は人間の口には熱いから注意が必要だ。 空気を一緒に吸い込みつつ澄んだ黄緑色の燃料を流し込み、ほうと一息。美味い。 「あー美味いねえ」 北上がこう言うとまるで酒を仰ぐオヤジのようだ。 大井は何も言わずにちびちび飲んでいるが、それもまたらしい。 「提督、こういうことは面倒がらないんだねえ」 そうなのだ。 自分としてはこだわりを持った淹れ方だと自負しているが、それでも本格的な茶道は流石に気が向いた時にしかやらない。 でも畳部屋ができたわけだし、偶には気が向くこともあるだろう。 ところで。 「それでは私がいつも面倒がってるみたいじゃないか」 「朝の放送とかすごくダルそうだったけど」 それは朝だからさ。 夜戦馬鹿ということではないが、寝起きに気分は上がらないもんだ。 四六時中だるいような態度は取ってないつもりだぞ。 戦果の獲得は兎も角、一定のラインより落とさずにするところからも自分の鎮守府の運営ぶりを分かってほしい。 また企業等と違って毎週土日を休みにしているわけでもない。 ここまで言うと鬱陶しい多忙主張になってしまうが、普段傍にいる大井なら鎮守府をおざなりにしていないことは分かるだろう? 「まあ……」 おい。 ここで歯切れを悪くするな。ここは即答すべきだろうが。 なにか不満でもあるのか。 「やる気がないとは言いませんが、それと実力とはまた別の話ですよね」 う……。 「執務の進め方とか」 うぐ……。 「あとは作戦の考え方とか?」 北上まで言うか。 「艤装の開発もダメですよね」 それは工廠の連中次第だろ。 こちらは完成しやすい必要資材の配分も資料に記録しているんだ。至って真剣に頑張ってるんです。 ……ここまで駄目出しされたのは久しぶりだ。 こいつ等以外の艦娘とは事務的な会話以外殆どしないのだが、他の艦娘も心の内では不満が眠っているのかもしれない。 湯呑みの底の茶渋くらい沈んだ気持ちで茶を口に運ぶ。 「……そんなに私は向いていないかな?」 「……大丈夫だよ」 北上? 「沈んだ子がいないってだけでも上出来だと思うよ。あたしは」 「……そうね」 大井? 「提督は、よく頑張っていますよ」 ……やられたな。 軍とは関係のない平和ぼけした世間話をする時に見る北上と大井の微笑み。 からかわれていたのか。 こいつ等は揃って思った事を口にするタイプだ。お世辞を言ったような事は記憶にない。 だから突然掌を返すような評価を、理屈でなく勘で信じることができた。 北上が言うように沈んだ艦がいないのは事実だし、大井のこの短い太鼓判の一言にも自分を自信付ける程度には価値がある。 指摘された点はとても改善が難しいが、良い評価もされていることが分かって口角が少し持ち上がった。 「……それならよかったよ」 …………………… ………… …… それからまた、軍と全く縁もゆかりも他愛さえもない談笑が始まり、続く。 だから茶は割とすぐに飲み切ってしまった。 まだ飲むには再度湯を作る必要があるが、もう面倒臭い。 「ねー、提督は付き合う時なんて言ったのか聞かせてよ」 流石にネタの引き出しも少なくなってきた頃に、北上は急にニヤけた顔を作ってそんな事を聞いてくる。 「……そういえばまだだったな」 「え?」 そうだった。まず交際の申し入れなどしていない。 そんな形式ばったやり方など正直要らないと思って念頭にも置いていなかったのだが、 話題に出されたので一応やってしまおう。 疑問符を浮かべる北上から大井に向き直る。 大井はきょとんとした表情で私を見つめていた。 「大井……。私と、付き合ってくれッ!」 そう言って畳に額が当たらんばかりの土下座の姿勢を取った。 しかし真に気になるのは確信している答えではなく大井の反応だ。 いつ顔を上げていいのか教えてくれる観測妖精は……いないか。 「……は」 『は』? これは一体どういう反応かと顔を上げて見ると、大井はちらと北上を気にしつつも端が僅かに上がった口を開いた。 「はい」 ……流石と言うか、やはり冷静なものだ。 こちらとしては面白く慌ててくれる反応を期待していたんだがな。 こうも普通に返されるとこちらが反応に困る。 土下座から上げた真顔のままさて何を言うべきか迷っていたが、顔の筋肉さえ動かす前に、右舷から非難するような声がかかった。 「いやー提督さあ……」 「ん?」 「付き合ってもいないのにそういうことしてたの?」 はて、自分は今日だけで何度このように細めた目を向けられただろう。 備蓄の弾丸を箸でつまんで数えるよりも下らない、そんなことを数えて報告してくれる観測妖精もやはりいないな。 まさかそんなことで北上から非難を食らうとは思わなんだ。 もしや結婚するまではそういうことはしてはいけませんとかそういう古風な貞操概念か。 意外だが侘・寂が感じられる、とても良い心掛けだと思うぞ。 「と言われても、始めに仕掛けたのは私じゃ――」 びしっ。 「い゙っ!」 非難から逃れようとした自分は、北上とは違う方向からかなり力の入った手刀で黙らせられた。 今度は前方の状況を確認する。 さも手刀をやりましたと手を立てたまま取り繕うこともしない大井の姿があった。 やはりというか目が細められているのだが、北上がやったような眉を寄せての分かりやすい表情ではない。 当鎮守府比三割増しと大々的に印刷したラベルでも額に貼ったらどうかと言わんばかりの目を細めた笑顔だ。 その掌に全ての力が入っていると思わせるくらいには、眉間に力が入っていない。 しかしよく見ると口の端がひくひく動いている。 そして瞼が細くなって光があまり差し込まなくなったその眼は笑っていない。 「……まあ、皆が皆北上と同じような考えではないということだよ」 一先ずはこれだけ北上に言っておくことにする。 大井の威圧するような顔の裏には言わないでほしいという意図があることくらい分かるし、 自分も少しふざけたというか魔が差したというか、うん、デリカシーに欠けたな。 図に乗るとすぐこうなってしまうが、反省する気はない。 自分の身を滅ぼすほどの過激なことはしないし大丈夫さ。 「大井っち……」 「な、なに?」 「……まあ あたしはやっぱ、基本そういうのきっちりしてからだから」 苦笑しつつも大井にも何か言おうとして、一旦は納得したのか引き下がってくれたようだ。 自分もいつまでも大井の前で正座していないで自分の座布団に戻ることにする。 「ほう。北上にもそういう予定はあるのか」 「当たり前でしょ。あたしだって一応は女の子なんだよ?」 自分で一応と言っていいのか。 でも北上は普段の調子から垣間見る女の子らしいところがとても印象に残るから、 少なくとも自分はちゃんと女の子だと思っている。 自信持っていいぞ。 「え、そ、そう?」 「大丈夫。北上さんは十分女の子らしいわ。悪い虫に取り憑かれたら追い払ってあげる」 「そうだな。下手すれば私も唾つけてたかもしれない。なんてな!」 冗談を一つかましてニッと笑ってみる。 このあと大井から撃ちますだの悪い虫だの突っ込まれる事を狙ってやったのだが、自分はどこかで計算を間違えていたらしい。 突然北上から照れた笑みが消える。 「……大井っち、いい?」 「大丈夫よ、北上さんなら」 何が? 「じゃあ……」 主語が欠けたわけの分からない質疑応答によって置いてけぼりにされた自分の気持ちなど構わず、 北上がこちらへ四つん這いで近寄ってくる。 そして自分のすぐ横に正座で居座ったかと思えば、あろうことかその頭を肩に寄りかからせてきたのだ。 自分からは北上の黒曜石のような黒髪しか見えなくなり、心の内を語る顔は伺えない。 何を考えている? 「……おい。この話の流れでそれは勘違いされるぞ」 念のため注意しておく。そしてこれは確認の意味も含めている。 それでも北上は離れようとしなかった。 「んー? 好きに取るといいよ」 その返事が一番困るんだが。 自分の察しが勘違いか正しいか、よく考えようとして疲れてくるこちらの事情をせめて重油の涙程度だけでも考えてほしいものだな。 そして更に悩ませることに、いつの間にか音を立てずに近寄っていた大井も北上のように左側でもたれかかってきたものだから敵わない。 ……大井も北上も自分を好いてくれる理由が分からん。 自分は平凡だ。そのうえで人を惹きつける魅力は特にないと思っている。 さっきも言ったが、こいつら以外とは私的な会話が少ないところもそれをよく表していると思う。 自分がどういった話を振ればいいのか分からないのも理由の一つと言えるが。 「んん……」 楽な体勢にしようと擦り付けるように動き呻く大井の声と、警戒心が全く感じられない穏やかな北上の息遣いに邪魔され、 改装されずに古ぼけたままでいる木の天井を仰いで自分に問いかけた疑問は答えが出ないままに脳の深海に沈んだ。 この状況はいつまで続くのか。座椅子の背もたれは、ぎし、としか答えない。 気がつけば西日もいよいよ薄れ、そろそろ明かりを灯したいと思えてきた頃にちょうど腹の虫が鳴る。 食堂に赴くまで自分の体は左右の人肌によって程よく保温された。 …………………… ………… …… 夕食時の食堂の喧騒は外からでも聞こえるほど大きい。 しかし中に入ってみると、入り口に近い席に座る艦娘はまるで学校の優等生が珍しく遅刻してきたかのようにこちらを見て黙った。 「……?」 一先ず気にしないことにしてカウンターの様子を見に行くと、間宮は落ち着きを手放さず慌しそうに動いていた。 厨房の奥を覗いてみると、戦力になる一部の者も割烹着を着用して手を貸しているらしい。 ご苦労なことで、と他人事のように思っていると、カウンター席で大きな存在感を放つ者を見つけた。 「むぐむぐ、……あら、提督?」 赤城だ。 とりあえず厨房係による回収の手が追いつく程度まで皿を積み上げる速度を落としなさい。皿を落とされると危ないから。 「善処します」 食べながら口を開きつつも口を手で隠すところは良しとしよう。 しかし善処するとしか返さない者は大体その気がない事を経験上知っている。せめてゆっくり噛め。 ……決めた。今回はここに座ろう。 「相席してもいいかな?」 「え? ……どうぞ」 なんだ。その間は。 「だって……いいんですか? 後ろのお二人は」 ううむ。やはりどこかのテーブル席を取ったほうがいいだろうか。 ついてきていた大井と北上に振り返り、答えを求める。 「……いいんじゃない?」 「私も、特には」 問題ないな。 ならばと赤城の隣の椅子を引いてどっかと座った。あとの二人も静かに席に着き、左から赤城、自分、大井、北上の順に並ぶ。 再び箸をそれなりの機敏さで動かし始めた赤城の食べっぷりを見て、間宮の手が空くのを待つ。 目の前に並ぶ調理済みの海幸山幸穀物の品々は逃げないというのに赤城のペースは落ちない。 しばらくして間宮が現れた。 「お待たせしました。何にしましょう」 慌しそうなのに間宮のおっとりした口調は健在だ。 そういえば赤城の様子をぼーっと見ていて何を頼むか考えていなかった。 厨房は忙しいというのにこれはいけない。えーと……。 「あ……お二人にはまたあのメニューでも出しましょうか?」 食堂全体を見渡すと忙しいはずなのに、息を切らすような様子をおくびも出さず、 にっこりとこんな戯言まで吐く間宮を見る限りでは全く忙しそうには見えないから不思議だ。 そういうことを全く考えていなかった自分はと言えばまんまと不意を突かれ、首に氷でも当てられたように体がびくついた。 「い、いや、いら――」 「いりませんっ!」 うわ。今度は右に驚いた。 砲撃音とも思わせた大声を張り上げた大井は顔を伏せているが、その横顔は赤いのが分かる。 この大声によって食堂の喧騒は静まり、赤城を含めた周りの艦娘の視線が自分らに集中砲火された。戦況は非常に不利だ。 指揮官である自分さえも、前方と右舷からの先制攻撃によってしばらく動きを拘束されてしまう。 「……あ、とりあえず適当に……じゃない。えー、鉄火丼と味噌汁を頼む」 兎に角間宮を追い払う、もとい作業に戻らせるべく、適当に見繕ってもらおうとして、やめた。 美味ければなんでもいいのだが、それを伝えたら結局あのメニューを出されるかもしれないからだ。 露骨というより隠す気が全くないあれを人前で頂くのには抵抗がある。 「あら、残念ですね。北上さん」 「残念だねー」 おい。お前らいつの間にか妙な同盟でも締結していたのか。 そういえばあのメニューを思いついたのは北上だったか。二人揃ってその生暖かい笑みをやめろ。 この二人が手を結んでいるようじゃ、北上に真冬のアイスクリン過剰供給の脅しも暖簾に腕押しと言ったところか。 「あたしは……、い号定食でいいや」 「かしこまりました」 あとは頼んでいないのは大井だけだが、大井はエンストでも起こしたように動かない。 大井の肩を叩いて問いかける。 「……おい。お前はどうするんだ」 「えっ!? あっ、提督と同じ物で!!」 「…………」 その時歴史が止まった。 「……あっ」 ……というのは流石に過言というもので、 実際のところ自分はせっかく散りかけていたのに再び集まった注目の視線が、どのようにすればまた散ってくれるのか、 脳の燃料とも言えるブドウ糖を惜しげもなく浪費していただけだ。 仕舞いには耳に蜘蛛でも侵入してくるかのような、ひそひそとした内緒話まで聞こえてくるものだからもうやってられない。 顔を伏せたり上げたり大井も忙しい奴だな。膝の上に作った握り拳と肩から力を抜け。 自分で言ってから小さく、あっ、というのは何なんだ。 「あらあら」 間宮よ。戦艦の口癖でも移ったか。 元の雰囲気から似ているとは思うがそこまで似せなくてもいいんじゃないか。 赤城も食べていた物のおかわりを頼み、間宮は赤城が積み上げた皿をいくつか回収して厨房に引っ込んだ。 あんな成りでも意外としっかりしているものだ。 そろそろ部屋中の艦娘の視線は外れてきたが、最初の喧騒は戻ってこなかった。 聞き取り辛い小さな話し声が後ろでいくつも飛び交い、少し居心地が悪い。 天井を仰いでも喧騒は戻らないし、居心地も良くならない。 こんなつもりで食堂に来たんじゃないんだがなあ。 「……あのメニューってなんですか? お勧めなんですか?」 赤城は知らんでいい。お勧めでもない。そんな子供みたいな純粋な瞳を向けても教えてやらんぞ。 恐らく盛り付けるだけだろう鉄火丼と味噌汁はすぐに届いた。 味噌汁は味噌汁で多くの者が嗜むはずだから、きっと作り置きしてあるのだろう。 落ち着きを取り戻した大井の図らいにより、北上の御膳が届いてから三人で召し上がる挨拶をした。 好意で付けてくれたお新香を摘み、早速丼の鮪をタレの通った米飯と共に口に運ぶ。 美味い。甘辛いタレがいい刺激になる。 鮪の赤身からは筋が取り除かれているところが特に素晴らしい。 やはり間宮の作る飯は美味い。これだから自宅に帰る気がなくなる。 丼を持って赤城にも劣らない速度で目の前のご馳走を減らしていると、赤城が飲み込んでから声をかけてきた。 「んぐ。そういえば提督に聞きたいことがあったんです」 「むぐむぐ、なんだ」 一方こちらは腹が減っていたこともあり、口と箸を止めずに先を促す。 「今日は大井さんとデートに行ってらしたんですか」 「んぐッ!」 近くの艦娘からであろう視線が背中にビシバシ当たったり、大井がむせ始めたり、なんとも影響力のある奴だな。赤城は。 その力は戦場で彩雲や先制航空部隊を飛ばしたりする時は遺憾無く発揮してほしいが、ここは戦場じゃないんだぞ。 しかもその後で先制魚雷を放つ重雷装艦に悪影響を与えるのはやめてくれ。 丼と箸を置いて咀嚼したまま、むせてしまった大井の背中を擦ってやる。 ……こちらに顔を伏せて私の袖を摘まんでくるのは無意識か? 「大井さん大丈夫?」 「……ほら味噌汁飲みなさい」 口の中身を飲み込んでから指摘してやると、言われてやっと気づいたように慌ててお椀に口つけた。 「はーっ……」 喉の引っかかりは無事解消されたようだ。大井もやはり不意打ちには弱いものだな。 不意打ちされても動じないようにするにはきっと相当な精神の訓練が必要だろう。自分はやりたくない。 「……で、なんだったか。デート?」 「ええ。提督、今日は出かけていましたよね? それにお二人の服……」 自分は私服のままだし、大井も軽巡時代の装甲だ。この状態で何もない方がおかしいかもしれない。 さて、言ってしまっていいのだろうか。自分は抵抗ないのだが。 大井を見やって答えを求める。 「……いいですよ」 夜伽については言うなという反応を見たが、これくらいなら構わないようだな。 「……行ったよ。デート」 「……へぇ……」 自分で聞いておいてそれしか言うことはないのか。 しかも不審なことに、変な虫でも止まっているのか、目の前に並ぶ多くの料理を見つめたまま食べようともしない。 少し不気味だ。料理にとっては蛇に睨まれた蛙のように、不気味どころでは済まないだろうが。 兎に角は目の前の鮪などを腹に収めることに専念する。 背中に視線がまだまばらに当たる気配を精一杯無視し、食べる速度が落ちた赤城を尻目に自分は最後の米粒を摘まんだ。 大井と北上が完食するまで待ち、まだ終わりそうにない赤城には別れを告げて食堂を出た。 窓に目をやるともうすっかり日は見えなくなっていた。いざこうなると暇だ。 北上は姉妹艦のところへ行くと言うが、大井は着いてきては駄目、と言う。 気でも遣ったのか? 最初大井は着いて行きたがったが、結局すぐに大井が折れた。満更でもなさげな様子が分かった。 …………………… ………… …… 執務室に戻って再びストーブに火を起こし、炬燵の電源を入れ、部屋を充分に暖める。 先に炬燵に入り温もりを得ようとする大井の後ろに自分は腰を下ろし、抱きすくめ、大井から温もりを得ようとする。 北上が見ている時でも往生際が良かったように、北上さえもいないこの場で大井が抵抗することはなかった。 「提督、この手はなんですか? 何かの演習ですか? 撃ってもいいですか?」 しかし、大井は受け入れる態度とは真逆の言葉を放った。 そのギャップが可笑しくて、くす、と笑いが漏れる。 艤装をつけているのならばまずこうして後ろから抱きしめることすら不可能なんだがな。 「提督は最近子供染みた振る舞いばかりで困ります。仮にもこの鎮守府の提督でしょう?」 あのな。私以上に威厳ある役職に就いている人間だって誰しもこういう面はあるんだよ。 そしてそういう面は決まって特定の人物にしか見せないという共通点がある。 こんな提督が嫌だって言うのなら、それまでの信頼を築いた自分を恨むんだな。 「嫌です」 突つき合うような科白を繰り広げながらも、 自分は笑いながらやっているし、大井の声色もまた全く棘のないものだった。 「あっ」 大井は何か思いついたような声を上げたかと思えば腕を振りほどいて立ち上がり、執務室の鍵をかけた。 突然腕の中から消えたその熱源が振り返って戻ってくるその顔は、とても愉快そうだ。 指定席と化したらしい座布団に正座し、何故か炬燵に足を入れようとせずこちらを向く。 「子供の提督には膝枕をしてあげます」 おお。率先してそのようなことをしてくれるとは。 ならば早速と横になって、渋い深緑の枕カバーから伸びる綺麗な膝に頭を乗せる。大井の体はどこの部分も柔らかいな。 ただ、これだけでは部屋の鍵をかける理由が分からない。 しかし大井が突然上半身の装甲のボタンを解き始めた事で、それは明確になる。 やがて装甲の前部が開かれ、中々に重みのありそうなタンクが苦しさから開放されたように姿を現した。 たぷんと揺れるそれに目が釘付けになるのは男としての性であり、こんなものを見せられた暁には子供のままではいられない。 ぐぐぐ、と自分のズボンの中の魚雷が反応を見せる。 「……ぁ」 最初からその気だったのだろう大井は、それに気づいたというよりも気づく前から目をつけていたと思う。 男のモノの変化の過程を異性に見られるというのは、まだ理性が抜けきらない事により恥ずかしいものもある。 だから嬉しそうな反応をするのもいいが、さっさとそいつをどうにかして中途半端な理性を消して欲しかった。 それを行動で示そうとして、自分はタンクに手を伸ばした。 「ッ」 向こうの質素な寝室と違ってこの部屋には暖房器具があるから、この手は冷たくはないだろう。 遠慮なく手を動かす。ただ柔らかいだけでなく張りがあるから飽きない。 飽きるどころかそれだけで満足はせず、更なる一つの欲求が浮かび上がってくる。 揉みしだくのを一旦止め、ぐっと上体を持ち上げて赤子のように吸い付く。 ちゅ。 「んっ!」 やっていることは子供だが、はたして子供が股間をおっ立てたりはするものかな。 そして授乳する母親が、はたして子供の股間を摩ったりなどするものかな。 勿論そんなことはあり得ないよな? 「ん、ふふ……」 背中に手をやって支えてくれるのはいいが、ズボンの上から擦っていじめるのはやめてくれ。直接触ってほしいんだよ。 しかしそれを伝えようにも口はタンクによって塞がれているので、言葉で伝える事は不可能だ。 タンクから口を離すだなんて考えは南西諸島の渦潮にでも捨てている。 一瞬で結論が出た脳内の軍法会議の末、口に含んだこいつを舌で転がしたり突いたりしてやることにした。 「ん、んん……!」 攻めようとする考えで行ったのに、自分の魚雷が愚直にも硬度を増した。 しかし攻めが通じたのか苦しげな魚雷を哀れに思ったか、じー、と独特な宣戦布告の音が耳に入った。 優しくまさぐられ、やっと魚雷が格納庫から取り出された。望み通り、きゅ、と握ってくれる。 最初は所々を指圧マッサージのように指で押されるだけなのだが、魚雷のどこを押されても一定の快感が伝わる。 その刺激によって順調に魚雷は限界まで固く膨らんだ。しかし大井はまだそこまでしかしてくれないようだった。 膨らみきっても指圧マッサージは何の変化もつけられないまま続行される。 仕方がないので口の中のこいつに不満をぶつけることにしよう。 つん、つん。 「ッ……」 ぺろぺろ。ちゅー。 「んん! っく」 やられっぱなしではなく、立派に抗う大井も馬鹿にはできない。 そうして魚雷の硬度を保ちつつ暴発しない程度に巧みに弄られては、潤滑油が漏れてしまうではないか。 だが大井はそれを狙っていたようで、掌を魚雷の先端にぐりぐりと押し付ける。 少量の潤滑油を塗り広げた大井はやっとそいつを扱き始めた。 潤滑油が出てくるのを待つという体で焦らしたんじゃないだろうな。 完全に大井の思うがままにされているだろう自分のそれは、感度を良好な状態まで上げてから急に上下運動をされるものだから、 突然跳ね上がった快感の規模にうまく抵抗できずに口を離してしまう。 「くあっ!」 「うふふっ」 大井はとても愉快そうに笑みを零した。 目の前のタンクに吸い付きたい欲求に少しの反発心を加えて今一度攻撃を開始する。 それからの自分らは、互いに攻撃して攻撃されるという守りなしの一騎打ちが続いた。 大井のタンクの先端も、こちらの魚雷も、物は違うが透明の液体でひどく濡れそぼっていった。 おいしい。気持ちいい。 ちろちろ。ちゅうちゅう。 「ん、っく!」 ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ! 「……ッ! ッ!!」 扱く速度は速い。最早焦らすなどは考えられておらず、ただ魚雷を暴発させようと追い詰めるだけだ。 こちらは誤って口のこれを噛んでしまわぬよう繊細に気を配りつつ愛撫するので精一杯で、正直我慢している力は残っていない。 こちらが我慢できないなら大井も道連れにしてしまう気持ちで乱暴にタンクを吸い上げにかかる。 ちゅうううう! 「んっ! んんんん!!」 ほら、声が高く上がって行っている。 しかしもうこちらは充分健闘した。限界だ。 口をほんの一瞬離して息を吐き出してから咥え、中身が漏れ出るくらいの気持ちで吸い上げる。 ちゅううううううっ! 「んああああっ!!」 びゅっ! びゅるっ! 魚雷は暴発し、視界は一瞬ちかちかして、自分は糸が切れた人形のように口を離して体から力を抜いた。否、抜けた。 大井は最後のところだけ口を開けて啼いたくせに、魚雷が噴出した白い油は飛び散らないようしっかりと手で受け止めていた。 「はあっ、はあっ……」 今はただ息を整えることだけしか頭にない。今日は油がどれくらい出たとかはどうでもいい。 「はー……。いっぱい出ましたね、提督?」 そうか。 「まだできますよね?」 「……ああ」 ついでに言い忘れていたが、この執務室は施錠に加えて部屋全体が防音処理もされていて、とても密談に向いている。 わざわざ寒い向こうの寝室へ行ってからなんて煩わしい。嗚呼、今日布団をもう一枚買っておくんだったな。 現時点でまだ深くない今夜は、このようにしてのめりこんでいく。
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/789.html
836 :ひゅうが:2012/02/16(木) 18 40 52 銀河憂鬱伝説ネタ 本編――「老提督」 ――宇宙歴789(皇紀4249)年8月2日 銀河系いて座腕 自由惑星同盟 首都ハイネセン 自由惑星同盟に対する返礼使はさまざまな話題を同盟全土に提供していた。 今年のはじめにはじまった報道はまるで古の万博のように連日3DTVで特集が組まれ、同盟では時ならぬ歴史ブームの火がついている。 この日の話題は、フェザーン自治領で行われていた銀河帝国軍との交渉が妥結し、捕虜交換の具体的な日程が決定されたことに押されてはいたが、2600年の歴史を有する議会制民主主義国家アイスランド共和国や北欧諸国と呼ばれる国家群の代表団が同盟と新たに正式な国交を樹立したこと、そして日本帝国の代表団の長をつとめる当代の国家元首の姉宮が同盟議会で演説を行うことも十分な話題となっていた。 捕虜交換に関しては同盟軍のスポークスマンであるベイ中佐が共和制ローマの故事を持ち出し「帝国のように忠誠心が足りないと責めるのではなく、敗将にセカンドチャンスを与えて強大なハンニバルに立ち向かった古の故事に習うべきだ」と同盟市民の関心をくすぐるような発言をしているし、国交樹立が行われた北欧諸国については第2次世界大戦や宇宙移転を中心にした歴史の解説が行われ食卓では子供らが父親にさかんに質問をあびせかけて彼らを混乱させている。 ニュースが経済面に変わると、「エア回廊会戦(同盟側名称)」の影響で中断されていた対日貿易船団が日本帝都と英国帝都に達したというニュースが入り、辺境貿易を旨としていた警備・輸送会社(元海賊ともいう)の株価がストップ高を記録していることを好印象に、自由惑星同盟中央証券取引所の平均株価は40年ぶりにブルース・アッシュビー元帥時代の最高値記録を突破したとアナウンサーは述べていた。 評論家はフェザーンが提唱している為替変動制の導入を時期尚早と切って捨て、当面は固定レートでの合弁事業で同盟の国力回復に注力すべきだと力説している。 討論番組では聖戦の意義を強調する右派評論家と民主的な要素と共和制を区別すべきだとする中道派、そして下手をすれば同盟政府解体とでもとれてしまうよくわからない主張をする左派が噛み合っているようで噛み合っていない議論を戦わせていた。 ――つまりはいつも通り、ということになる。 アレクサンドル・ビュコック中将は朝の日課であるニュースペーパー2紙とテレビの斜め見を済ませ、そう結論した。 「おい。」 「はい。」 長年連れ添った妻とは、声音だけで何をするのか通じ合ってしまう。 今回の「おい」はただの枕詞だった。 そういえば、カラー映像が残っている最古のジャパニーズ・エンペラーは「あ、そう。」だけで数種類を使い分けていたとか昨日のヒストリカルチャンネルで言っていたか。 ビュコックはそんな益体もないことを考えつつ、今日の予定を述べた。 「今日は、公式行事だからな。夜の晩餐会には遅れないように。」 「分かっていますよ。そんなあなたが士官候補生だった頃じゃあるまいし。」 からからと妻は笑う。 ビュコックが兵から士官候補生への推薦状を持って同盟軍士官学校に入学した当時の失敗談をネタにして笑う妻だが、いつものこととビュコックは少し顔をしかめるだけですませた。 「ああ。まあ念のためな。帝国などといってもドレス着用だなんだと堅苦しいことは言わんらしいから気合は入れすぎないようにな。お前の顔だと浮く。」 「あらいやだ。ドレスなんて作ってないわ。それにそんなところなら出席を遠慮するところですし。」 「そうだな。儂も呼びはしない。まあ予備役だからして、軍服だけ着用するという手もあるが。」 「よして。この年でスカート型軍服は少し――」 だろうな。とビュコックは笑う。 もう。と背中をぴしゃりとたたく妻は、実は元同盟軍の士官様である。 第2次ティアマト会戦後に推薦状をもらって入学した時の高嶺の花は、以来数十年を彼の妻として過ごしている。 実際は20年ほど前に統合作戦本部後方勤務本部次長を最後に退役しているが、ビュコックはそれと入れ違いに艦隊司令官の一人となっていた。 837 :ひゅうが:2012/02/16(木) 18 42 34 「恥ずかしくない程度の恰好はしていきますよ。なんたって私はヒーローだそうですからね。」 士官学校の舞踏会(士官たるものは社交的な素養も身に着けなければならないため練習を兼ねて行われる)で、遅刻してきて白い眼で見られるビュコックを、妻が男性用ステップでリードしてのけたのはもう随分昔の話だが、その時についたあだ名がそれだった。 ビュコックはこいつは一本取られたとばかりに型をすくめ、コーヒーのおかわりを飲み干した。 彼は、武官の一人としてあの同年代であるのに外見はあの頃の妻と同じくらいの使節団の皆様をご案内する役目を負っていたのだった。 ――数刻後、同 自由惑星同盟議会(代議院) 控室 「お見事な演説でした。」 ビュコックは拍手をしながら、正使殿を出迎えた。 場所は、同盟議会(代議院)の控室。 最高評議会委員たちのための控えの部屋である。 代議員たちを前にした演説を終え、拍手に送られてきた内親王殿下を相手に、ビュコックは自然体で蒸しタオルを手渡す。 侍従の一人を言いくるめて奪い取ったそれを手にした女性は「ありがとう」と言って顔の汗をぬぐう。 この少々安っぽい部屋に日本側代表団から正使とその侍従たちがいるのは、ビュコックがここにいるのと同様いってみれば妥協の産物だった。 もともとは、ある程度つながりがあるヤン中佐やパエッタ提督などの名前が挙がっていたのだが彼らのみが親しくなりすぎることへの懸念(と主にお偉方の打算)があったことや野党の横やりもあり、「与野党のどちらでもない控室」であるこの部屋が選ばれ、なおかつ「兵からたたき上げで提督にまでなった自由の闘士 アレクサンドル・ビュコック」が案内人として選ばれていたのだった。 本人にしては迷惑極まりなかったし、片付けをしても残る生活臭を必死で消す羽目になった秘書や事務官たちも同様だった。 普段は答弁している委員たちを尻目に秘書や事務官たちがお茶会をやったり、演説原稿に注釈をつけたりしている部屋は、どう見ても場違いな人々がこうしてひしめくことになっていたのであった。 「緊張されましたかな?」 「ええ。といっても少しですがね。何事もはじめてはありますから。」 これでも演説じみたことはしていまが、自分ですべて話す言葉を決めるのは久しぶりです。と彼女は笑った。 ビュコックをはじめ、同盟側からも出ている連絡官たちが「おお」と眉を上げる。 今の言い分が正しければ、この人は秘書やライターなどに演説原稿を書かせたわけではないらしい。 事務方が多いこの場では、その事実自体が好印象に値した。 「あ。でも電脳とか補助とか検索とかはしていますよ!? 別にそれほど苦労したとかそういうわけじゃ――」 「はっは。いえいえ。」 ビュコックは笑い、あわててそれをおさえて言った。 「殿下。そういうことはやってくださっただけで価値があるものです。ご謙遜も度が過ぎますと嫌味になってしまいますので、どうぞお受け取りを。」 おい。とビュコックは後ろでこそこそしている事務官を呼んだ。 ひゃ・・・ひゃい!と舌足らずになってしまった声を上げて直立不動になってしまった事務官の手の上には、菓子の袋があった。 どうやら仕舞い忘れていたらしい。 「それ。」 「え?あ、はい。」 ビュコックは、銘菓ハイネセンラスクを手にとり、「どうですか?」と勧める。 侍従が制止しようとするのをこんどは内親王殿下が抑える。 ビュコックは、同じ袋から取り出した大判のラスクを半分に割り、「どちらにされます?」と首をかしげる。 そして彼女が選んだ方を残し、残りをバリっと口に含み、差し出す。 彼女は笑って、もう片方を手に取り、そして同じようにバリっと口にした。 ちなみにこのことはどこからかマスコミに漏れたが、ビュコックへの注意を行おうとした同盟軍には殿下直々にその必要なしという言葉と、銘菓数種の購入代金と注文書が回ってきたという。
https://w.atwiki.jp/yaruoperformer/pages/2333.html
 ̄ ̄ ヽ ____ / ____ } >''" ~"''*、 / ィi〔/(__)/{´ / \ く /-=ニニニニ 、 / jI斗-‐7⌒ヾ ~"''*、 \ ァチア|¨-=ニニニニニ / ,.... ' ;ィi〔三三三三ミh、 `ヽ、 \ ノィY'^ミ | ┃ ┃| ./ ,ィ ;ィi〔三三三三三三三ニ℡ ヽ、 .} ノハ { | | / ,イ ∠三㌢⌒「 i i i i i i } ̄⌒ヾ三ム } ,/ 从ト、 | 乂_.ノ | 八 V/ i i i i iム-一{ i i i i i √ ̄ ̄ Ⅵ i ム }′ _} `| | ≧=‐| i i i i i/ _ 从 i;i i | ー-- 、! i i i i | { ≧sニ=---rァ‐' 从 i i i{ ''"~ .e | ヾ{ 、e_, Ⅵ 从__ ,. ィi〔` __} ト-- __ |^Y从  ̄ . 〈 | } 。o≦ { o  ̄ ¨¨≧s。__ 八 ∧ ′ / ̄ ', } j{ 、 \_ ', /-イ_ V j / L_ ,ィiム込、 ´ ` / ⌒ゞ三ミト、_∧ , } _、rf〔三㌢ 个o。. イ } `''<三ニミh、 ', vo { ¨ヽ 、rf〔三三㌢ ... ≧s。.。s≦ ノ `''<ニ} 〉 i } -- } ゞ三三㌢ \ }{ ... ' { |,.イ/ ' ¨¨  ̄ 丶 / ̄ ̄ ヽ |''",. |/ |ハ/// } jト . \. | ヽ } { σ ;′ ;′ V// } o \ _ .ィ^ .. } ∧ ' ; | | / V/ } i 〉' ¨¨ ′. ∧ ∨ | { ′ v/ { l ′ / ', | ;′ / } { | / / ∧ ... } ヽ / ′ , { o ' / { ∨ .{ σ ./ . { / { { / / }\ ∨ } _乂 ,.. ... } { ` Y ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ `ヽ、 / 八 ~"''ー――------ 、 / ______!_______________``~、_/____ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 名前:提督(ていとく) 性別:男/女 原作:艦隊これくしょん~艦これ~ 一人称:プレイヤー、作品による 二人称:プレイヤー、作品による 口調:プレイヤー、作品による AA:艦隊これくしょん~艦これ~/提督.mlt 「艦これ」のプレイヤーキャラというかプレイヤーの分身。 やる夫スレでは上記のAAでの出演が多いが、右のホワイトクソ提督に女性提督もいる。 アニメの「いつかあの海で」では顔がはっきりと映し出された提督が登場。 視聴者達からは担当声優の名を取って成田提督と呼ばれている。 時報等で艦娘が語るゲームの一次情報としての提督は、セクハラさんとかの部分もあるが「料理が上手い」がかなり共通している。 またそのためかホワイトデーの返礼品のセンス(食品)も褒められることが多い。 キャラ紹介 やる夫Wiki Wikipedia アニヲタWiki ニコ百 ピクペ 登場作品リスト タイトル 原作 役柄 頻度 リンク 備考 真・女神転生オタクくんサマナー~世界滅亡パパ活計画を阻止せよ!~ 女神転生シリーズ HN てーとく・サマナー 準 まとめ R-18 あんこ ACっぽい世界であんこもの アーマードコア 護衛艦隊の指揮官 脇 まとめ 予備 R-18 あんこ完結 島流されアカリのポケットモンスタートロピコ ポケットモンスター ケルディオビバレッジ代表、四天王 脇 まとめ R-18 安価エター レミリアは青春を謳歌するようです オリジナル モンスターバトルの参加者 脇 登場回 まとめ あんこ 短編 タイトル 原作 役柄 リンク 備考
https://w.atwiki.jp/11992345/pages/104.html
______ / \ / 丶 ' ___ / ィi〔ニY ⌒Y≧s。 ', / ィi〔ニニニ乂__ノニニニ 、 〈 〈ニニニニニニニニニニ〉 / \ニニ「` -========- ´ミV/ ¨i{^| ┃ ┃ |ミ^Y i{〈| |ミ } 从| l l |/ノ | ` -- ' |´ | | 乂________/ r┴‐‐┬┬ ‐┴ォ _} } { { 。o≦¨¨八 } { イ≧s。 。o≦///// ´ } ̄ ̄ ` ////≧s。 __r‐< ¨¨  ̄ ̄ } ○  ̄ ̄ ¨¨ >o。 _ ' V } } 、 / V } } ∧ { V } , ∧ , ', } ○ / ∧. / . } ′ ∧ ギルド「船と海の学校」のギルド長 人魔戦争にて夢魔の間に上層部を侵略されていたジパングの出身者 戦争中は他国に救援部隊として派遣されるも闘技の間の誰かにより顔を焼かれるなどの重傷を負う それ以降、笑顔の仮面を付けるようになった 人類が次の戦争で勝てるようになるためならば修羅の道を突き進む覚悟であり、 詳細は明らかになってないが非人道的な処置を孤児に行ってるようである。
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/548.html
398 :名無しの紳士提督:2014/09/18(木) 21 06 20 ID u5gY2Zw.そういや皆はSS書く上で提督はどんな人物にしてるんだ? 399 :名無しの紳士提督:2014/09/18(木) 21 12 17 ID fvpMPL9I 398優柔不断のクズ!! 402 :名無しの紳士提督:2014/09/19(金) 00 08 48 ID WdodaISs 398ショタ予想以上に筑摩さんが難物でどうしたものかと悩んでる 403 :名無しの紳士提督:2014/09/19(金) 00 33 13 ID SXbC30PM 398雰囲気イケメンかな...またはヤンキーオッサン提督とかも想像はするけど鎮守府では少し浮いてしまいそうな 404 :名無しの紳士提督:2014/09/19(金) 00 41 35 ID 7Yi9bIuEあんまり若いとそれはそれで違和感だから、お兄さんとオッサンの中間ぐらい20後半~30前半あたりのイメージかな 405 :名無しの紳士提督:2014/09/19(金) 01 39 23 ID s70pZuec 398変態だったりムキムキだったりくたびれたオッサンだったりニンジャめいてたり無個性だったり書くたびに変わるどんなに設定しようが最終的にはチンコキャリアーなんだけどね 406 :名無しの紳士提督:2014/09/19(金) 12 00 29 ID 64sxxuO.動物提督で獣姦でもいいのよ? これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/